新型コロナウイルスの集団感染が発生したクルーズ船「ダイヤモンドプリンセス号」の運航会社に対し、元従業員3人が8月7日、解雇は無効だとして東京地裁に提訴した。地位確認と未払い賃金、損害賠償の支払いを求めている。
運航会社は米国のカーニバル・ジャパン。3人は営業や予約手配、顧客対応などを担っていた。訴状などによると、同社は6月初旬、従業員68人のうち24人に退職勧奨を行った。退職に応じなかった原告らに対し、同26日、解雇を通告した。
提訴後の会見で代理人の今泉義竜弁護士は「整理解雇四要件(解雇の必要性、解雇回避義務の実施、人選の合理性、労働者との誠実協議)を満たしていない。特に雇用調整助成金や持続化給付金を申請しないなど、解雇回避努力が尽くされていない」と指摘する。
3人は退職勧奨の直後、連合ユニオン東京に加入した。団体交渉では雇用調整助成金の活用などを求めたが、会社側は「焼け石に水」「国民の税金を、そんな無駄なところに使うべきではない」などと述べ、拒否したという。裁判に先立ち、東京都労働委員会に救済を申し立てている。
勤続15年という原告は「クルーズ船のお客様がまだ少なかった時に働き始め、話の通じない米国本社とお客様の間に立って仕事をしてきた。そんな私たちの人生を考えず、裏切られた思いだ。安心して働ける元の会社に戻ってほしい」と語っていた。
〈写真〉冷酷な首切りを行ったカーニバル・ジャパン社に対し、原告らは日本の雇用ルールを守るよう訴えている(8月7日、都内)
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