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    インタビュー/労使で転換期を乗り越える/民放労連・高木委員長/政策協議の枠組みづくりに意欲

     民放労連は7月25日に開いた定期大会で、高木盛正委員長を選出した。高木氏は2004年から東京放送(TBS)労組委員長を務めている。民放業界は今後大きな転換期を迎えるとして、労使の真摯(しんし)な対話と、民放連や行政との政策協議の枠組みづくりに意欲を示す。

     ――新委員長として今後力を入れたい課題は?

     高木 民放業界は転換期を迎えている。特にキー局が厳しい。昨年の年間広告収入はテレビがついに2兆円を割り、インターネットが2兆円を超えた。一方、総広告費は6兆9千億円で、全体のパイは若干増えている。テレビが落ち込んでいるということだ。

     ネットフリックスなどのインターネット媒体の進出は著しい。テレビよりも広告のターゲットを絞りやすく、市場に直結したメディアだ。この動きは確実に加速していく。

     今後テレビの業績が落ちていくとすれば、僕らの賃金、労働条件が低下し、雇用の問題も生じるだろう。民放連など経営者団体や、行政と政策協議の枠組みづくりを進めたい。

     今後、ローカル局の再編が進み、電波行政も変わっていくだろう。非現実的なベア要求を掲げたり、経営側とのチャンネルもなく騒いだりするのではなく、加盟組合には現実的な交渉ができるようになってほしい。そのための支援は惜しまないつもりだ。基本は労使協調。対等な労使対話を広げていきたい。

     

    ●膝詰めの話し合いを

     

     ――加盟組合には長年の労使慣行があり、変えるのは簡単ではないのでは?

     難しいとは思う。ただ、何だかんだ言っても民放業界はこれまで順風満帆だった。他業種からの参入もなく、放送法改正で会社乗っ取りもできない。電波行政によって強固に守られてきた。広告収入がそれなりにあれば景気が悪くなってもそれなりに経営は安定していた。労使が膝詰めの談判をする必要がなかった。

     しかし、これからは民放始まって以来の転換期になると思う。何とかしなければならない、というのが民放労連の委員長を引き受けた理由だ。

     若い人が簡単に辞めていく。昔はテレビ局に就職したら辞めないものだと思っていたが、今は全然違う。ペイをよくしないと人材は逃げ、業界は発展しない。労使の対話が必要だ。

     ――11年前、TBS労組のストを指導しました

     ストは唯一の武器。最初から使わないと決めつければ、僕らは武器を持たない人になってしまう。法律で保障されているのだからきちんと使って意思を示す必要がある。

     経営側にとっても役員や株主を納得させる必要がある。「組合がうるさいから」とストを説得の材料に使ってくれればいい。それも組合の役割だと思う。TBS労組は今も毎年スト権を立てている。この10年余りで経営側は労組にきちんと相談してくれるようになった。対等で良好な関係となり、スト権を行使することは今ではなくなった。

     ――傘下の争議支援はどうなりますか?

     これまでのことは分からないが、産別として支援していけばいいと思う。対話のチャンネルをつくり早期の解決を目指すべき。

     

    ●現実主義、是々非々で

     

     ――テレビ朝日労組の脱退はどう考えますか?

     方針に対する考え方の違いと会費の問題と聞いている。一時金が毎年減る中、産別会費は連合と比べて高い。

     すぐに再加盟というのは無理だろうが、在京キー局労組としてテレ朝労組とは引き続き良好な関係を保ちたい。その延長で元の鞘(さや)に収まってくれればいいと思う。(脱退の)系列局労組への波及は今すぐあるとは思わない。

     ――今後の対応は?

     テレ朝労組には非常に大きな課題を与えられたと思う。組合員の労働条件を守ること以外の運動方針に対して、否定的な若い人の声が多くあることは事実。そうであれば何らかの方策を取るべきだ。

     私は右寄りでも左寄りでもなく、現実主義、是々非々で対応してきた。組織内に今までの運動方針に否定的な声があるのであれば、私たちの方針も変化させていかなくてはいけない。会費を引き下げた方がいいというのであれば、そうするのが現実的な対応だと思う。