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    ウーバーの労働者が勝訴/カナダ最高裁/オランダ国内法の適用を否定

     ウーバー運転手らが裁判で同社を訴えた場合、どの国の法律が適用されるのかについてカナダ最高裁は6月26日、「カナダのウーバー運転手や食事配達員は、オランダ法の下で同社と争う必要はない」との判決を言い渡した。8対1の評決で、同社の業務委託契約に記された「オランダでの仲裁」規定を無効と結論づけた。

     事件の発端は3年前。オンタリオ州の州都トロントでウーバーイーツ配達員だったデビッド・ケラー氏が筆頭原告となり、集団訴訟を起こしたこと。配達員はウーバーの従業員であり、最低賃金の支給や有給休暇の保障などを怠っている同社は、州の労働基準法に違反しているとし、総額4億カナダドルの賠償を求めた。

     ウーバーは「会社との紛争は、海外事業本部を置くオランダの法律に基づき、同社が定めた仲裁手順に従う」という契約に運転手や配達員が同意していると反論。一審がこの主張を認めた後、二審の控訴裁判所が原告勝訴を言い渡したため、最高裁に判断が委ねられていた。

     

    ●渡航費用が重すぎる

     

     最高裁は、原告がウーバーの規定に従って仲裁を受けた場合、掛かる費用はケラー氏の年収をはるかに超える金額となることに着目。優越的な立場にある大企業が、交渉力で圧倒的に不利な者に、そうした契約を求めるのは不当だと断定した。

     ウーバーは、判決に沿ってカナダの契約を改めると発表した。

     世界65カ国で事業を展開するウーバーは、同社の運転手や食事配達員を個人事業主として扱い、米国以外ではオランダの海外事業本部を通じて複数の関連会社と業務委託契約を締結。だから、オランダの法律が適用されるのだと主張してきた。このため、昨年十数人の配達員が交通事故で死傷したメキシコでは、遺族らが補償を求めて会社と争いたくても、オランダまで渡航する費用などを工面できず、みな泣き寝入りしたという。

     ウーバーイーツで組合作りが進んだ日本やオーストラリアでは、「オランダでの契約」をやめた。日本ではウーバーポルティエジャパン社を設立した。ただし、団体交渉については「配達員は労働組合法上の『労働者』に該当しない」と拒否し続けている。

     

    ●英仏でも勝訴続く

     

     一方、ウーバーに賠償を求めているカナダの集団訴訟は現在、審理が止まっている。どちらの国の法律を適用すべきかについて争いがあったためで、今回の最高裁判決によってこの問題は決着。いよいよ、最高裁判決の内容を踏まえ、労働者性の有無を含めた集団訴訟の審理が再開することになる。

     労働者性をめぐる英国とフランスの裁判では、「審理はオランダで行うべき」というウーバーの主張を、裁判所が一審で退けた。フランスでは今年3月に最高裁でウーバーの敗訴が確定した。英国でもウーバーが3連敗中で、7月20日に最高裁判決が出る。

     1年以上にわたり、カナダでウーバー運転手の組織化に取り組んできた食品商業労組(UFCW)は、今回の判決を歓迎。ケラー氏らが集団訴訟で勝ち、労働者性が認められることを確信していると述べた。(国際運輸労連政策部長 浦田誠)