連合は7月1日、臨時の最低賃金全国対策会議を開いた。中央最賃審議会での目安が決まる前に開催するのは異例。実務担当者を集めた同会議で神津里季生会長があいさつするのは初めてで、それをメディアに公開することも初の試みだ。
異例の開催と公開に踏み切った理由について、神津会長は「日本全体に『雇用が厳しいから(最賃引き上げは)抑制も仕方ないのでは』との雰囲気がある。そうではないことを、社会全体として共有しなければいけない」と語った。
●引き上げへの熱い思い
神津会長は、中央最賃審議会での諮問内容など、最賃引き上げに消極的な論調に触れて「大変厳しい逆風の中にあるが『意はわれにあり』。なんとしてもはね返していく。(毎年の最賃引き上げの流れを)とどめることは許されない」と訴えた。
絶対水準として一刻も早く最賃額千円を実現し、その先の高い目標を持って取り組むことを求めた。「時給千円でも年収200万円の水準だ。コロナ禍の影響は立場の弱い非正規労働者などに強く出ている。時給単価引き上げに対する熱い思いがいつになく強まっている」と述べた。
地域間格差について「四つのランク分けが格差を拡大してきた歴史がある。構造的な問題だ。(地域間格差への対処は)都道府県の地方最賃審議会の公労使で決めることだが、全体を冷やすことは許されない。中央最賃審議会の目安を皮切りに、しっかり引き上げていく」と強調した。
●凍結は経済にマイナス
中小企業の苦境を口実にした慎重論に対し、「コロナ禍の下で中小企業の経営や雇用について、国を挙げて守っていくべきであり、財政支出を含めてつないでいくことは大事だが、最賃引き上げの議論とごっちゃにしてはいけない」と主張。最賃引き上げの凍結や、目安を示さないという予測に対しては「安易な選択だ。そうなれば労働分野だけでなく経済社会にとってもマイナスになる」とくぎを刺した。
「リーマンショック時の(賃金抑制などの)失敗を繰り返してはならない。企業ごとの労使交渉では『雇用が厳しいから賃上げは我慢してくれ』ということもあるが、最賃引き上げの課題はオールジャパンだ。(最賃引き上げも)抑制しようということにはならない。かつての常識で物事を考えると将来に禍根を残す」と語った。
〈写真〉あいさつする神津会長(7月1日、都内)
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