2020年5月、新型コロナウイルス感染が拡大する中、「スーパーシティ法案(国家戦略特区法の改正案)」が国会で可決・成立した。ネット上では「不要不急ではないか」などの批判もあったが、マスメディアではほとんど取り上げられず、国会論戦も深まらないままの可決だった。
●まるでミニ独立政府?
「スーパーシティ」とは、国家戦略特区制度のもと新たに設置される仕組みである。国家戦略特区は、加計学園問題で安倍首相の「お友達優遇特区」として広く知られるようになった。地方自治体の実態やニーズよりも官邸の意向ありきで立案され、各省庁を飛び越えたトップダウンで進められてきた。決定プロセスも透明性が低く、特定の委員やその関連企業など利害関係者の影響への疑いも強い。
そんな特区を使って政府が大々的に打ち出したのが「スーパーシティ構想」だ。2018年10月、「スーパーシティ構想の実現に向けた有識者懇談会」(座長は竹中平蔵パソナグループ会長)が設置された。
スーパーシティ構想とは、「人工知能(AI)やビッグデータを活用し、社会のあり方を根本から変えるような最先端の『丸ごと未来都市』を、複数の規制を緩和してつくろう」というものだ。その「実証実験」の場が自治体。有識者懇談会座長である竹中氏は、自治体が規制緩和と事業運営についての強い権限を持つという意味で、スーパーシティを「ミニ独立政府」とまで言い切る。
●個人情報の扱いは…
その事業の核となるのは、「データ」である。住民の個人情報に当たるものもあれば、本人が特定されないよう加工されたデータ、地理や交通量のデータなど多様なものが含まれる。これらを「データ連携基盤」というプラットフォームで一元化あるいは分散管理し、異なるサービス同士の連携で利便性を高めようとするものである。
例えば、ある人がスマホのアプリで病院の診察予約をするだけで、自動的にタクシー会社から送迎タクシーが配車され、診療後にはドローンで薬が自宅に届く……という具合だ。確かに便利かもしれないが、国会審議でも懸念されたのは個人情報の扱いである。
スーパーシティでは行政(国・自治体)と企業が保有するそれぞれの情報の垣根を取り払って連携していくことになるため、安全性や管理方法、事件や事故の際の責任の所在など論点は尽きない。進められる規制緩和の内容について、住民が初期段階から意見を述べたり懸念を表明したりする機会は十分保障されておらず、地方議会の関与・承認も法律には位置づけられていない。住民自治や民主主義をないがしろにするという批判も生じた。(つづく)
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