「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    大学生のバイトに休業補償を/学生ユニオンが交渉中/雇調金の拡充制度活用を訴え

     首都圏を中心に19店舗を展開する、もつ鍋居酒屋「木村屋本店」で働く男子大学生が休業補償を求めて、学生ユニオン(首都圏青年ユニオン)に加入し、運営会社KIDSと団体交渉を行っている。6月18日に記者会見を開き、詳細を明らかにした。

     正社員には賃金の6割の休業補償が支払われているが、学生アルバイトには一切ない。学生アルバイト全員に全額の休業補償を求めるとともに、その原資に雇用保険未加入でも使える、国の緊急雇用安定助成金の活用を訴えている。

     

    ●生活に不可欠な収入

     

     会見で訴えた学生が働く店舗では正社員は3人で、学生アルバイトは12人。店は学生アルバイト中心に回っていた。新型コロナウイルスの感染拡大により、4月5日から休業し再開のめどは立っていないという。

     勤務は、週4~5日、平日は約5時間、休日は10時間。収入は月10万円ほどあったが、現在は無収入で貯金を切り崩しながら生活している。父親をがんで亡くし、母親もがんにかかり闘病中だ。これまではバイト代を生活費や大学の教材費などに充てていた。

     労組や弁護士が4月に行った「なんでも電話相談会」に電話した同僚の正社員を通じて、ユニオンにつながった。

     

    ●不当な扱いが横行

     

     運営会社側は学生アルバイトに休業補償をしない理由として「雇用保険加入者のみに休業補償を支払う」と回答した。この学生の場合、週の所定労働時間が20時間以上あるなど雇用保険の加入条件を満たしているが、昼間に大学へ通う学生であるため加入対象とならず、未加入者とされている。

     新型コロナの影響拡大の下、厚生労働省は雇用調整助成金の対象を雇用保険未加入者にも広げる「緊急雇用安定助成金」を創設。学生ユニオンはこの制度を活用して休業補償を支払うよう訴えている。

     首都圏青年ユニオンの尾林哲矢事務局次長は「学生アルバイトでも休業補償がなければ生活困窮に直結する。ユニオンに寄せられる相談の8割以上が、休業補償されず生活への不安を訴える内容だ。学生アルバイトへの不当な扱いが横行している」と話した。

     

    〈写真〉「会社は休業補償されず困窮している学生アルバイトに向き合ってほしい」と訴える組合員(中央)と尾林事務局次長(左)(6月18日、都内)