新型コロナ感染ウイルス拡大で、公設の文化会館や体育館が休館する中、その業務を指定管理者として受託する企業で労働者への休業補償が行われていないことが分かった。労組の指摘で是正される方向だが、こうしたケースは氷山の一角とも指摘される。公的業務を担いながら法令を守らない指定管理者の資質と、発注元である自治体の責任が問われている。指定管理制度は公的施設の管理・運営を、「指定管理者」に指定した民間企業に委任する制度。「小泉改革」を機に全国に広がった。
●告発なければ丸もうけ
横浜市のある文化施設では3月以降、コンサートなどの文化イベントは全て延期か中止となり、業務を大幅に縮小した。ここで働くパート労働者から5月、「上司に確認したところ、『休業補償の予定はない』と言われた」との相談が神奈川労連に寄せられた。
運営主体は、指定管理者の民間企業。全国で自治体業務に参入している。6月の面談で同社は、「休業補償する予定だった。算出方法が分からず、労働局に確認していた」と弁明。過去3カ月分の賃金平均額の全額支給を約束した。
山田浩文事務局長は「労働者の告発がなければ、休業補償がされなかった可能性は高い」と述べるとともに、氷山の一角ではないかと指摘する。
横浜市によると、市は業務縮小期間中も指定管理料(委託料)を全額支払い、イベント延期・中止による損失も補填(ほてん)、利用客からの利用料収入も前年実績に基づいて、運営会社に支払っている。労働者に休業補償を支払わなければ、その分、会社の丸もうけとなる。
●3カ月放置し支払い表明
神奈川県鎌倉市の市立体育館で働くパート労働者から5月、2月28日以降の休館中の休業補償がされず、会社に年休を取得させられたとの相談が神奈川労連に寄せられた。指定管理者は全国でスポーツクラブを運営するコナミスポーツだ。
相談者は同労連・鎌倉逗子葉山地域労組に加入。団体交渉では、休業期間の賃金全額補償と、取得を余儀なくされた年休を「特別休暇」に振り替えることなどを求めた。
会社側は、「休業は不可抗力によるもの」であり、労働基準法上の休業補償義務はないとの見解を表明。その上で、社内労組と4月初めに結んだ労働協約を希望者にも適用するとし、平均賃金の10割を支払うと回答した。休業開始から3カ月を経てようやくの表明だった。
ただ、平均賃金の10割といっても、休業手当の算出方法に従えば、実際の支給額は少なくなる。賃金全額補償の要求を会社側は拒否。取得した年休を労働者に返還し、休業補償を約束した。
鎌倉市でも、コナミに対し、休館中の指定管理料を減額せず全額支払い、利用料減収分も一定補填する。担当課長は「他の自治体よりも手厚い。休業補償は十分支払えたはず」と同社の対応をいぶかる。
●問われる、自治体の責任
発注元の自治体が後手の対応になった問題も指摘される。横浜市の担当者は、給与などは民間企業である指定管理者の問題で、自治体は関与しないと説明する。ただ、法令順守は指定管理条例で定めているので、違反があれば放置はできないとの立場だ。
山田事務局長は「発注元の責任として、自治体がきちんと把握しなければならないが、実際はそうなってはいない。実態を調査し、法令違反をなくすよう指導すれば、すぐに解決する問題だ」と話す。神奈川労連は近く、加盟組織とともに、県下すべての自治体に実態を調査し把握するよう要請を行う予定だ。
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