日本の文化を支えるフリーランスの働き手に必要な補償がされるよう訴え、関係団体が5月20日、都内で会見を開いた。国民健康保険からの傷病手当支給や、発注元が倒産した際に賃金を立て替える制度の適用、国の持続化給付金の運用改善を求めた。今国会でまとめる第2次補正予算での措置を訴えている。
会見は、日本俳優連合、出版ネッツ、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)が開いた。
新型コロナの感染拡大に伴い、国は3月、国保加入者でも仕事以外のけがや病気で平均賃金の3分の2を支給する傷病手当金への財政支援を決めた。だが、対象を雇用労働者に限定している。出版ネッツの杉村和美さんは「出版産業で働くフリーランスは仕事上のけがは少なく、労災より傷病手当のニーズが高い。まずは労働者性の高い人を対象に含めてほしい」。
傷病手当支給は自治体が決める。主催者によると、都内23区など多くはフリーランスへの適用がない。岐阜県飛騨市と鳥取県岩美町が制度を整備している。
会社倒産の際に国が未払い賃金を立て替える賃金確保法の適用も求める。日俳連の森崎めぐみ国際事業部長は「映画、映像の制作には高額な制作費がかかり、倒産がままある。2010年にはアニメ『まんが日本昔話』『タッチ』の制作会社が倒産し、報酬が支払われなかった。業界が伸びていた16年でも倒産は前年比12%増の27件。新型コロナ禍でどうなるか想像するのもおそろしい」と話す。
前年同月比で売り上げが半減した個人事業主に最大百万円を給付する、国の持続化給付金の改善も焦点。5月半ばまでに俳優・声優に聞いた293件のアンケート中間報告では、「ありがたいけれど、条件に合わず利用できない」が44%に上る。
報酬の入金が2~3カ月後で、実際は4月に仕事がなくても入金があるために要件を満たさないケースや、雑所得で申告していた人は対象外になるなどの事情があるという。こうした現場の声を国に届け、改善を求めていく。
●「まるで途上国のよう」
日俳連がまとめたアンケート中間報告の自由記述では厳しい実情を訴える声で溢れている。俳優・声優のほとんどは休業補償のないフリーランス。新型コロナの影響で仕事もアルバイトもなく困窮する人も少なくない。
5月以降の収入の見通しを聞いた設問(複数回答)には「変わらない」はわずか4・8%、半減以下が最も多い43・4%で、無収入が22・9%もある。
経済的な問題では、「仕事を持続するためのお金が足りない」が最多の57%で、家賃(40%)、社会保険料(35%)を払うお金がない、食費が足りない(30%)が続く。
現状について、「仕事もないバイトもないお金もない芝居もできない。地獄です」「せめて検査を充実させて観客の不安を一層してほしい」「この数カ月で1回切りの10万円で暮らせというのであれば納得できない」「今の条件では本当に生活に困っている人にお金が届かない」「芸術関係の人間への給付金を新たに作って欲しい」。
国に対しては「持続化給付金の申請、通帳の画像を送ろうとするとエラー。電話はつながらない」「まるで発展途上国のよう。特に芸術や教育をないがしろにしている」など厳しいコメントが寄せられている。
〈写真〉法による保護の谷間にいるフリーランス。国の早急な対応が求められる(5月20日、都内)
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