大阪府守口市(西端勝樹市長)の学童保育指導員10人が5月15日、雇い止めの無効やなどを訴え、市が業務委託する「共立メンテナンス」(東証1部上場)を相手取り、大阪地裁に提訴した。雇い止めは合理的理由を欠くとともに、原告の人格を否定し、労働組合の活動を嫌った不当労働行為だと訴えている。委託後わずか1年、新型コロナ感染拡大の下での大量の雇い止め。市の責任も問われる。
市は昨年4月、ビジネスホテル「ドーミーイン」の運営や、自治体業務の受託などを手掛ける「共立メンテナンス」に学童保育業務の委託を開始した。原告10人は市の直営時代を含め8~37年従事する。全員、守口市学童保育員労働組合(大阪自治労連)の組合員だ。
訴状などによると、同社は3月12日、原告らに対し、業務命令違反があるなどとして「注意書」を交付し、同23日、3月末の雇い止めを通告。雇用を打ち切った。
原告らは、注意書の内容について曖昧で事実誤認が多いとし、懲戒処分はなく、個別の注意や指導も行われなかったと反論。注意書には「会社を批判した」との文言が多くあり、訴状は「原告らが疑問を呈したり意見を述べたりしたことを不当に嫌悪し、排除しようと雇い止めを行った」と指摘している。
組合活動を嫌い、弱体化を狙う不当労働行為だとも指摘する。今回雇い止めにされた13人のうち、原告を含む12人が組合員。4月には、大阪府労働委員会が同社に対し、団体交渉に応じ、再発防止の誓約書を掲示するよう命じた。
同社は一度も団交に応じていない。「適法な労働組合ではない」などと述べ、交渉応諾を引き延ばしているが、この主張は大阪府労委に一蹴されている。
●守口市の責任は重大
原告側代理人は「同社とともに、学童保育事業を民営化した守口市の責任も問われる」と指摘する。
守口市は18年、「プロポーザル(公募型企画競争方式)」という方式で同社に優先交渉権を与え、5年の業務委託を決めた。この方式は本来、低価格競争による人件費削減や雇用の不安定化、それに伴う品質低下を避けるための措置だ。
実際、同社は委託が決まる前、希望者全員の雇用受け入れと、平均年収330万円の確保を市の選定委員会で表明。市も、学童指導員については定年まで雇用するとの直営時代の労使合意を守るよう求めていくと述べていた。
そのわずか1年後の雇い止め。同労組の水野直美委員長は「突然の雇い止め宣告で頭が真っ白になった。新型コロナ感染対策をしながら保育をしていたのに、こんな理不尽なことがあっていいのかという不安と怒りでいっぱいです。今はただ子どもたちに会いたい」とコメントしている。
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