日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)が行った「報道の危機」アンケートの自由記述欄では、政権への批判・チェックが困難になってきた現状が告発されている。背景には、特に報道機関側の忖度(そんたく)・自主規制・事なかれ主義の広がりがあるという。
報道内容に対する権力側からの圧力・クレームはエスカレートしている。「こちらの取材で明らかになった事象について報道した際、政府側から一方的に『誤報だ』と決めつけられ、執拗(しつよう)に謝罪と訂正を求める電話がかかってきた」「某省の事務次官が、弊社のクライアントも多数集まるシンポジウムで講演し、某省に対して批判的な弊社の報道(全て事実)を画面で映し出して『これは間違った報道だ』『偏向報道』などと紹介した」などの実態が紹介されている。
自治体取材も例外ではない。横浜市のカジノ構想批判や市の不祥事について書いた記者は「市幹部の記者個人へのクレームはすさまじい。不祥事を書いた日は携帯電話にいきなり電話があり、記事の内容が不服で…続報を書かないようにと圧力を加えてきた」という。
こうした圧力に負けないメディアがある一方で、屈してしまっているところも少なくない。
ある地方の放送局社員は自社の中間管理職について「タブーとされる情報にはなるべく近寄らない報道姿勢。全て他人事。楯突けば支局に飛ばされるので何も言えない。社員は萎縮している」と告発。別の放送局社員は「幹部も上司も思考停止で、監督官庁の意向を忖度するのに必死で、唯々諾々と上からの指示に従っているという感じ。疑問を呈するという姿勢がそもそもない」と嘆く。
その結果としての忖度報道に対し、現場は「報道機関にとって自殺行為」「政権の方針を垂れ流す広報機関に成り下がっている事態」「独裁国家の国営メディアと何ら変わらない」など強い危機感を訴えている。
●労組に厳しい声も
自由記述欄には「ではどうすべきか」を提起した意見もある。
権力との癒着を生みやすい記者クラブ制度の廃止や、「孤独になりがち」な中間管理職を激務から解放することなどが挙げられている。加えて「今こそ同じ思いを抱く他社のジャーナリストと連帯していくことが重要な局面」との声も。
一方、報道の危機に対処できず沈黙している社内の労働組合に対しては「御用組合化している」など、厳しい批判も出されている。
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