ギグエコノミーの代表格であるウーバーやエアビーアンドビーが、次々と人員削減に乗り出している。新型コロナウイルスの感染拡大で、売り上げが激減しているのだ。
ウーバーのライドシェアは、利用者が8割ダウン。食事配達のウーバーイーツは、市民の外出自粛を反映して、日本などで売り上げが5割以上伸びているが、世界的な配車サービスの損失を補えてはいない。
同社は2万7千人の社員のうち、昨年は1250人を解雇した。今年も3700人を削減するという。2021年には創業初の黒字決算を目指すとしていたが、この業績見通しも軌道修正した。5月7日に発表した今年第1四半期の決算は、最終損益が29億ドル(約3080億円)で、昨年同期の3倍だった。
●事業見直しも進む
コロナ禍は、ライバル社も苦境に陥れている。米リフトは、解雇や一時帰休で2割強の人員を減らす。中東の最大手・カリームも従業員の3割を削減する。
民泊仲介のエアビーアンドビーでも、世界的な旅行需要の激減を受け、全従業員の25%に当たる1900人が職を失う。
ライドシェア各社はさらに、事業の見直しも進めている。ウーバーは、自転車や電動スケーターのレンタル業を同業他社のライムに売却した。食事配達では、チェコやエジプトなど6カ国から撤退。リフトもスケーター事業を縮小するほか、アマゾンの倉庫で働いたり、日用雑貨を配送したりする運転手を募っている。カリームは、バス事業を中断した。
パンデミック(感染症の爆発的な広がり)が仮に終息しても、顧客が戻ってくる保障はない。衛生管理一つをとっても、ライドシェアや民泊の利用者の意識は大きく変わってきているからだ。米タクシー労組の幹部は「防犯用だがシールドで運転席と客席を隔てているイエローキャブの利用が増えるのではないか」と語る。
●問われる経営姿勢
もう一つ注目されているのが、カリフォルニア州の動向だ。ネット上の単発仕事を繰り返すギグ労働者の保護を目指す州法が年初に施行された。ウーバーとリフトはこれに違反しているとして、州の司法長官らが巨額の制裁金を両社に求めている。こうした動きは他州にも波及するだろう。裁判で負ければ、財政負担は計り知れない。
利益を度外視して事業を急成長させた上、労働者保護や安全対策を怠ってきたギグ企業の経営姿勢は以前から問われていた。その付けがいま回ってきたのだが、これにコロナ禍が容赦ない追い討ちをかけている。(国際運輸労連政策部長 浦田誠)
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