「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    〈急拡張するビジネスホテルの裏側・下〉「各地で同じことが起きている」/労働組合に加入し刑事告訴も

     支配人と副支配人の2人はホテルの稼働率100%を維持し、売り上げに貢献していた。同時に本社にホテル運営や処遇について意見も言ってきた。しかし、改善提案が聞き入れられないため、首都圏青年ユニオンに相談し今年1月に加入した。

     同月下旬に団体交渉を申し込み、本社側は「協議」には応じたが事実上、改善に向けた話し合いにはならなかった。3月24日には、本社役員ら5人がホテルに来て、1人で勤務するWさんをフロントから排除、役員らが業務を行い始めた。2人はホテル内の住まいからも追い出された。排除される際に、殴られたり、体を押しあてられたりしたとして4月10日、Wさんは役員らを刑事告訴した。

     

    ●実態は働かせ放題

     

     2人がホテル内の住まいに貴重品などを取りに行くと聞き、4月14日同行した。2人の部屋はフロントのすぐ裏。寝室で寝ていてもフロントで大声で呼ばれれば聞こえるという。10畳程度の1Kは2人で暮らすには狭い。

     大量の飲み物とご飯のパックが目につく。食材を買いに行く余裕がないため、備蓄してやり過ごしていたという。体も心も休まるときはなく、痛み止めや睡眠薬を飲みながら働き続けた日々。「制服も名刺も本社社員といっしょ。指示され管理されて、これで業務委託といえるのか」とWさんは憤る。

     本社社員は貴重品を取りに戻った2人の行動を終始、スマートフォンで動画撮影していた。

         〇

     首都圏青年ユニオンの原田仁希委員長によると、4月10日の記者会見の様子が報道されて以降、同じように働く、複数のスーパーホテルの支配人らから「私も追い出された」などの相談が寄せられている。原田委員長は「全国各地のスーパーホテルで同様のことが起きている。業務委託契約は名ばかりで、実態は指示、管理して働かせ放題。大問題だ」と語っている。(おわり)

     

    〈写真〉記者会見で本社役員らによってフロントから排除された時の状況を語るWさん(右)。左は原田委員長(4月10日、都内)