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    新型コロナでストライキ/世界各国で発生/安全対策の強化などを要求

     米デトロイトのバス運転手、ジェイスン・ハーグローブさん(50)が、4月1日に死亡した。新型コロナウイルスに感染していた。「ひどくせき込む客が横にいた。口を覆わず、飛沫を浴びた。非常識な人だと憤りを感じたが、プロの運転手として黙って乗務を続けた」と生前に語っていた。

     ハーグローブさんが所属していた合同交通労組(ATU)は、こうした現場の不安や不満を受けとめ、3月17日には組合員による「一斉病休」に取り組み、市のバスを全面的にストップさせた。市長も組合の懸念に応え(1)当面は運賃を徴収しない(2)乗降は後部ドアのみとする(3)運転台すぐ後ろの席は空けて距離を保つ(4)バスの消毒・清掃を徹底する(5)できる限り乗務員にマスクや手袋を配給する――などを約束した。組合の代表は、このパンデミック(感染症の爆発的広がり)と最前線で戦う医療労働者をたたえながら、公共サービスを担う労働者もその前線にいるのだと訴えた。

     

    ●特別手当の支給を

     

     米ピッツバーグでは、清掃労働者が防護具の支給や危険手当を要求して山猫ストに突入した。英マージーサイドでも「3人乗りの清掃車は密接空間だ」と、労働者が反発して職場を放棄。組合によれば、業務の改善を会社に求めていたが、ずっと回答がなかったのだという。

     ベルギーでは大手スーパーのカルフールの6店舗が4月3日、一時休業に追い込まれた。商業労働者を組織するCSC労組が、働く者の尊厳を訴えてスト戦術に出たためだ。組合は、コロナ特需で会社の売り上げは大きく伸びているとし、感染からの保護強化や特別手当の支給を求めている。

     オンラインを使った食料品や日用雑貨の宅配が急増している米国でもここ数週間、保護や手当を求める労働者の声が高まっている。背景には職場で感染者が出ても、会社が何もしてくれないことへの反発がある。食料品の宅配事業を手掛けるインスタカートの配達員は3月30日、全米でアプリをオフにする「スト」を打った。自然食を販売するホールフーズの従業員有志は、一斉病欠を呼び掛けた。ニューヨークのアマゾン倉庫では、施設の消毒を求めて職場放棄に取り組んだが、先導した従業員は解雇された。

     

    ●危険回避は権利だ

     

     国際労働機関(ILO)の職業上の安全及び健康に関する条約(第155号)は「生命や健康に切迫した重大な危険のある場合、使用者が是正措置を取るまで、労働者はこうした危険な職場に戻ることを求められない。緊急避難した労働者はそのために不当な取り扱いを受けないよう保護される」と明記している。

     コロナ感染がやまない今、もっと周知・活用していい国際労働基準だ。(労働ジャーナリスト 丘野進)