建設現場でアスベストを吸い込んだことにより肺がんなどを発症した建設作業従事者が国と建材メーカーに謝罪と賠償などを求めている建設アスベスト訴訟。3月24日には建設作業従事者と遺族の43人が初めて埼玉独自の訴訟(さいたま地裁)を起こした。クボタやニチアスなど建材メーカー20社と国を訴えている。
●「建設職人のため団結」
埼玉土建(埼労連加盟)の組合員は今まで東京1陣(2008年・42人)と2陣(14年・21人)に加わっていたが、今回は埼玉土建に加え、建設埼玉(連合埼玉オブ加盟)の組合員も初めて原告として参加した。埼玉県内の2大建設組合が全面的に訴訟を支援する。建設埼玉の中村正雄委員長は「アスベストで被災した建設職人のために一致団結してがんばる」と述べた。
埼玉弁護団の髙木太郎共同代表は、訴訟の意義について「12年前から各地で訴訟を起こし、国や建材メーカーの責任は判決で明らかになっているのに和解に応じようとしない。これから増え続けるであろう全てのアスベスト被害者が救済されるように建材メーカーを巻き込んだ補償基金制度を創設したい」と訴えた。
●「命が軽く扱われた」
原告になった河端輝雄さん(電工・73)は「電気の配線を通すために天井裏で吹き付けられたアスベストを削ったり、穴を開けたりして作業していた。国や建材メーカーはアスベストの危険性を知りながら、安くて便利だと供給し続けた。建設職人の命や健康への配慮はなかった。私たちの命は経済発展よりも軽く見られていた」と語った。
大坂春子さんはアスベストによって、夫・金雄さん(大工・65)と息子・誠さん(同・46)を相次いでなくした。自身もアスベストが原因と疑われる肺疾患を抱えている。「息子は血を吐き『まだ死にたくない。やりたいことがある』と言って亡くなった。笑いの絶えないわが家だったのに、今は1人きりになってしまった。私の一番の願いは体に悪影響を及ぼすと知っていながら製造を続けた建材メーカーを断罪することだ」と訴えた。
〈写真〉さいたま地裁へ「提訴行進」する原告ら(3月24日、埼玉県)
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