新型コロナウイルスの感染拡大で雇用に影響が出る中、休業や教育訓練を行うことで雇用を確保した事業主に賃金原資の一部を支給する雇用調整助成金が注目されている。2月に最初の特例が出され、その後適用要件が2度緩和されたが、過去の特例と比べても見劣りがする。抜本的な拡充が求められる。
新型コロナをめぐり厚生労働省は2月14日、訪日中国人相手の観光業などに適用要件を緩和する特例を示した。28日には製造業に広げ、3月10日には「新型コロナの影響を受ける事業主」に拡大。集団感染が発生し「緊急指定地域」に指定された北海道については、売り上げ減の適用要件を事実上なくし、雇用保険加入の対象外の労働者にも助成対象を広げた。
ただ、過去の特例と比べると、今回の特例は見劣りがする。2009年に新型インフルエンザ感染が拡大した際の特例の助成は、中小企業で賃金の5分の4(解雇や雇い止めをしない場合は10分の9)、教育訓練費は同1人当たり日額6千円だった。一方、今回は中小企業で同3分の2、同1200円にとどまっている(表)。
雇用調整助成金は、多くの中小企業を含む、事業主の負担でまかなう雇用保険2事業が原資。今回のような経済危機対応に向けた、事業主のための積み立てでもある。
国の専門家会議はこのほど感染の爆発的拡大の可能性を指摘した。労組関係者は、助成内容を小出しに広げるのではなく、緊急指定地域の拡大など助成内容を抜本的に充実させて、制度を広く知らせ、雇用不安を少しでも減らすことが今は必要だ――と指摘する。
緊急指定地域の期限である4月2日が次の節目。雇用と中小企業を守る対応が求められる。
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