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    労働者の所得補償が不可欠/新型コロナで欧州労連

     ヨーロッパでの新型コロナウイルス感染の広がりを受け、欧州労連(ETUC)は3月10日、声明を発表した。欧州連合(EU)と各国政府に対して労働者保護を含む緊急経済対策の策定と、機動的な財政支援が必要と訴えている。

     声明は、経済へのダメージが2008年のリーマンショック時を上回る恐れがあるとし、緊急の対策が求められると指摘した。その際、休む必要がある労働者への所得補償が不可欠と強調している。

     感染リスクにさらされる医療労働者への安全対策の確保を最優先事項として要求。感染が分かった労働者や、体調不良の家族がいる労働者が収入と雇用を失わずに休めるよう労使交渉などで対応すべきとした。

     全ての労働者に生活できる所得補償を行うことが最も大切だと訴えている。

     低賃金・不安定雇用の労働者で、職場に病気休暇の制度がないケースには特別の注意が必要とも指摘。経営者が新型コロナを口実に雇用を削減する恐れがあるためで、声明は「経営側も相応の負担をすべきだ」とアピールした。

     その上で、あらためて公的な医療システム拡充が求められていると指摘。機動的な財政支出を求めた。

     

    ●イタリアでコロナスト/工場の操業停止を要求

     

     新型コロナウイルス対策として3月10日以降の外出が制限されたイタリアで、製造業で働く労働者のストライキが起きている。感染の拡大を防ぐため、不要不急の操業を中止すべきというのが労組の主張だ。

     仕事上の必要がある場合は外出が認められており、操業を続けている工場は少なくない。3月13日には政労使合意で、職場の安全確保のために操業の削減や停止が可能になった。しかし、実効性は乏しいという。

     造船業界では、労働者が新型コロナウイルスに感染したことが分かり、ストライキが広がった。鉄鋼業界でも、安全防具が不足しているとして10日間のストが行われている。

     イタリア労働総同盟(CGIL)などのナショナルセンターは、必要な公共サービス部門や医療関係を除き、3月22日まで全ての工場の操業をストップさせるべきだと要求。工場内の安全・衛生対策を徹底するよう求めている。

     組合は「工場以外のスーパーマーケットや宅配サービスで働く労働者の安全対策も必要。日曜日にきっちり休んで職場の消毒などを徹底すべきだ」と訴えた。

     

    ●所得補償と経済安定を/ITUCなどが共同声明

     

     国際労働組合総連合(ITUC)と国際産別労組は3月12日、英国で会合を開き、新型コロナウイルス対策に関する声明を発表した。労働者の所得補償を強く求めている。

     声明は各国政府に対し「労働者と家族の健康・収入に加え、実態経済の安定を確保するため、緊急の経済刺激策を実施すべきだ」と訴えた。

     その内容について(1)有給の病気休暇(2)生活をまかなうための収入の維持(3)雇用形態にかかわらず全労働者に対する社会的保護の拡充――が必要と指摘。雇用と経済を維持し、労働者の賃金・福祉、中小企業を守る上で不可欠だという。

     2008年のリーマンショック時の教訓を踏まえ、対策を打つべき対象は金融機関の救済ではなく、労働者の所得補償だと強調した。

     会合の中で国際運輸労連のスティーブン・コットン書記長は「経営者は責任を持って、サプライチェーンで働く労働者にも保護を与えなければならない。新型コロナウイルスによる危機的状況が続く限り、雇用形態に関係なく全ての労働者の賃金補償と、病気休暇、柔軟な勤務体制が求められる」と話した。