新型コロナウイルス感染対策で小中高校の臨時休校が始まり混乱するさなかの3月2日、石垣市議会で陸上自衛隊配備計画に伴う市有地の売却が、僅差の賛成多数で可決された。
配備計画地約47ヘクタールの半分が市有地。民有地では既に工事が進められており、工事はこれで一気に加速する。野党や計画地周辺住民の反発は強く、反対運動が続くとみられる。
●発端は2015年
2015年に防衛副大臣が陸自配備を正式打診して以降の経過は表の通り。
陸自は中国の海洋進出に備えて南西諸島への展開を進めている。与那国島に既に沿岸監視隊を新設し、石垣島、宮古島、奄美大島に地対艦・地対空ミサイル部隊などを配備する計画だ。各地の選挙で争点となり、住民投票をめぐる動きも相次いだ。その中で、かつて革新系市政が長かった石垣市は、新基地問題で対立が最も激しく続いてきた。
反対する側は住民投票実施など民主主義を尊重せよという手続き論で対抗し、多数の反対という事実によって阻止することを目指す。石垣市の場合は、それを議会の数の力で強引に抑え込んだ形だ。
●軍隊は住民を守らない
石垣島の配備地は農業地帯で、住環境や自然環境の悪化を懸念して周辺住民の大半が反対している。また、当然ながら軍事基地は標的になる。人口5万人弱の離島では、戦争になった場合の住民保護は困難だ。石垣島を含む八重山地域では、沖縄戦の時、軍によるマラリア地域への強制疎開で3600人が亡くなった「戦争マラリア」の悲劇がある。「基地が戦争を招く」「軍隊は住民を守らない」という歴史の教訓は八重山も共通だ。
真の相手は、島の賛成派ではなく日本政府である。沖縄県民投票の結果を無視して辺野古で新基地建設工事を強行する政権である。他方、秋田のイージス・アショアは一応見直しの手順に入った。やはり沖縄は差別されていると映る。
市民の中に大きな亀裂を生んだまま、石垣島はどうなっていくのだろうか。「詩の島うたの島」を誇る文化・芸能と観光の島に、「基地の島」という新たな顔が刻印されてしまうのか。(ジャーナリスト 米倉外昭)
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