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    インタビュー/最賃アップが日本を救う/自民党最賃議連 衛藤征士郎会長

     自民党で地域別最低賃金の「全国一元化」を掲げる議員連盟が結成されてから、2月で1年となる。議連結成が一つの契機となり、昨年の参議院選挙では主要政党のほとんどが最賃引き上げを公約に掲げた。議連会長で、元衆議院副議長の衛藤征士郎衆院議員に話を聞いた。

     

     ――最賃引き上げの意義は?

     衛藤 最賃の引き上げは間違いなく、経済の底上げ、家計の押し上げにつながる。最賃はかつて社会政策の一環だったが、今や世界のどこに行っても、最賃は経済政策の側面からやるべしという意見だ。

     わが国においても1959年に社会政策の一環として最低賃金法ができた。75年には当時の野党4党(社会党、共産党、公明党、民社党)が議員立法で全国一律最賃法案を提出した。この時に成立していれば、日本の経済は変わっていたでしょうね。イギリスは最賃の全国一律制を導入したことによってGDP(国内総生産)が加速度的に伸びている。

     ――中小企業の支援拡充として、大企業の内部留保活用に言及されています。

     大企業を中心とする内部留保は450兆円近くある。18年度のわが国の名目GDP、約548兆円に相当する。内部留保の1割でも45兆円だからね。これを下請け企業に回してほしい。それが賃金のベースアップに資するものとなれば、経済の好循環が生まれる。

     

    ●高齢者に購買力を

     

     ――最賃の引き上げ、一元化は待ったなしだと?

     経団連も日本商工会議所も慎重な姿勢だが、これから先、少子高齢化を乗り切っていくためには高齢者の購買力をしっかり維持し、むしろ高めていく政策をとらなければならない。最賃が上がらなければ、それはできない。

     さらに、地方創生と言っているが、今でも東京などへの一極集中現象は続いている。なぜかというと、都市部の最賃が高いからだ。例えば、九州・沖縄だと福岡を除く7県は最低額の790円で、一方、東京は1013円。この223円の時給差を年収換算すると約40万円になってしまう。

     非正規労働者の割合は4割、日雇いで働いている人たちもいる。そういうわが国だからこそ、最賃を引き上げる効果がいかに大きいかが、よく分かるだろう。

     大分で働いても東京と同じ最賃にしておけば、なにも大分から出なくてもいい。東京一極集中にブレーキをかける一番大きなツールが最賃引き上げと全国一元化だ。そして、地方の商店街が元気を維持し回復する効果もある。地方創生と少子高齢化社会の克服、そのための欠かせない一丁目一番地の政策だ。

     

    ●今年は地方から声上がる

     

     ――昨年度の最賃改定に際し、菅義偉官房長官に直訴したと聞きました。

     そう。私は菅官房長官に「5%引き上げ」を提案した。議連としてではなく、官房長官をよく存じ上げている私個人として。官房長官は相当に頑張ってくれましたよ。しかし、最終的には3%となった。

     ――菅官房長官も「5%にしたい」と?

     そうしなければ日本経済が好転しない、というお考えを持っている。あとは経済界の理解と決断だ。そして、我々与党の決断でしょう。

     最賃政策には与党も野党もない。私が思うに、間違いなくこの令和2年からボトムアップの動きが起きる。最賃上げろ、全国一元化にしろという決議が全国の市町村議会、県議会からあがってくるから、見ていてください。地方の声がグーッと、あちこちから出てくるよ。そうなると中央も動かざるを得ない。

     最賃が日本経済を救い、日本を救う。私は常々、こう言っている。