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    インタビュー〈中東海域への自衛隊派遣を問う〉下/船員にも大切な人権がある/海運九条の会世話人 平山誠一さん

     ――船員に危険が及んだことは?

     平山 米軍の要請に基づき、政府が借り上げた民間商船が、米軍の物資を輸送するために戦地に赴いてきた歴史があります。

     湾岸戦争(90年~91年)では、米国から日本政府へ協力要請があり、政府が民間商船を借り上げて「中東貢献策」として、日本籍の商船が米軍の物資を輸送しました。当時、海員組合は政労使で交渉し、危険な海域を航海することについて、一人ひとりに就労確認をとるなど、厳しい条件をつけて協定を結びました。

     海員組合の機関誌(「海員」2002年6月号)が当時の船長を取材しています。それによると、サウジアラビア・ダンマン港に接岸し荷役をしている時、2日続けてミサイルが飛来。それを米軍が迎撃、爆発音が頭上で響いていたと語っています。それくらい危険な状況下で仕事に就いていたのです。

     陸上で働く労働者は海外の勤務地が危険な状態になった場合、安全確保のために会社から帰国を命じられることがあります。民間人の命を守るために最も現実的な選択だと思います。翻って船員はどうでしょうか。同じ民間人なのに「自衛隊が守るから安心して乗船しろ」「船員だから職務上、当たり前だ」と言われているように感じます。船員も人の子。守られるべき人権があるはずです。

     

    ●平和外交こそ必要

     

     ――労働組合としての取り組みは?

     世界の船員を組織する国際運輸労連(ITF)は海運経営者団体と交渉を重ね、「危険な戦争海域への就航を拒否し、下船する権利」を勝ち取り、国際的な労働協約となっています。下船した際の賃金補償や帰国への旅費を海運経営者が負担することも明文化されています。船員は団結して、こうした権利を適切に行使することが求められています。これは究極的な人道上の問題で、労働組合の役割は大変大きなものがあります。

     先の大戦では約7千隻の民間商船が沈められ、記録があるだけでも約6万人の日本人船員が犠牲となりました。船員は国家総動員法に基づく「船員徴用令」などによって戦場にかり出されました。乗船した人数に占める死亡者数の割合は、陸軍・海軍の2割に対し、船員は4割と2倍です。「海は絶対的に平和でなければならない」。私たちの一貫した想いです。

     紛争や戦争状態の中、航海した経験を持つ船員は60代以上。現役船員の多くは経験していません。「船乗りの目線」で平和や憲法九条の大切さを伝えていかなければと思っています。

     平和外交によってこそ、中東海域に限らず七つの海に張り巡らされた海上ルートの安全な航海が確保されます。それが海に囲まれた海上交易立国である日本の生きる道だと思います。