鉄鋼、造船重機、非鉄金属、建設の労組でつくる基幹労連は2月5日、都内で中央委員会を開き、3千円を軸に2年分の賃金改善を求める闘争方針を決めた。多くの企業が2019年度減益を見込む中、厳しい時だからこそ総力を挙げて共闘の効果を強めるとの発言が相次いだ。
方針は、魅力ある労働条件と、産業・企業の競争力を強める「好循環」を生み出し、人材の確保・定着を図るとして、賃金改善に取り組む。要求額は20年度が3千円、21年度は「3千円以上を基本」とした。2年分とするか単年度とするかは業種別の部門や部会にゆだねる。
基幹労連によると、19年度の業績見通しは鉄鋼大手3社で大幅減益、造船重機大手6社中4社で減益、非鉄も6社中5社が減益だという。産別全体で賃金改善に取り組んだ18闘争では、1%に相当する3500円を基軸に設定したが、今年は引き下げた。
神田健一委員長は事前の会見で「産別として(賃金改善を掲げ)まとまって取り組まないと、(中小の)グループ関連企業の労組がついて来られない。3500円はミニマムの要求だったが、今回は極めて厳しい中、ぎりぎり許容できる額として3千円とした」と経緯を説明している。
報告した津村正男事務局長は「17年度の組織内の企業動向は増収増益が前年の倍に当たる41%、18年度の決算見込みは40%だった。19年度は逆に増収増益が13ポイント減、減収減益が14ポイント増。20闘争がいかに厳しい事業環境かが分かる。一丸となり、まとまりのある取り組みを」と呼びかけた。
討論では、鉄鋼大手や中小の組合から業況の厳しさとともに賃金改善に取り組む決意表明が相次いだ。特殊鋼部会の代表は「海外の鉄鋼需要の減少、原材料高騰など大変厳しい見通しだ。一時帰休を視野に入れている企業もある。きつい、汚い、危険の『3K』に加え、暑い、寒い職場。懸命に教育しても数カ月で他社へ転職してしまうこともある。人材確保と定着は喫緊の課題。賃金改善が大変重要だ」と語った。
川崎重工労組は先行き不透明感が増していると述べつつ「6年続いた賃金改善と好循環の流れを次の10年につなげる」と述べ、三菱マテリアル労組は「産別の一員として役割を果たす」と語った。
●年度内に決着見込み
65歳への定年延長も課題だ。21年度に60歳に到達する男性から年金支給開始年齢が65歳になる。準備期間を考えると、早い段階での制度整備が必要となる。
鉄鋼は大手3社が先行して協議を進めてきた。当初は春闘期に入る前での決着をめざしていたが(1)連続性のある一貫した賃金制度とする労組の要求(2)退職金で折り合わず、さらに鉄鋼業界の経営環境悪化がネックとなり、結論には至らないでいる。
現在、交渉のボールは会社側にある状況。年度内には回答が示される見通しだという。
大手3社の制度が決まり次第、中小組合での制度整備が進むことになる。基幹労連は現役世代の原資は使わず、60歳未満の賃下げをしない制度整備を目指している。
かつて60歳定年への延長の際は鉄鋼労使の制度整備が他産業に先行して行われた。今回どのような決着をみるのか、注目される。
〈写真〉厳しい交渉環境の中、共闘効果発揮を誓い合った基幹労連中央委(2月5日、都内)
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