日本教職員組合(日教組)は1月24日から3日間、広島市内で教育研究集会を開き、9千人が参加した。働き方をめぐる分科会の討論では、「教育委員会へ教員の出退勤記録を提出する際に校長が土日の部活動を削除」「タイムカードに出勤時刻が全部一律で打刻されている」などの報告が相次いだ。教員の働き方改革に関する二つのレポートを紹介する。
記録から運動へ/北海道
1人でも出退勤を記録
「もし、自分が過労死して残された家族が公務災害認定を闘うことになった場合、苦労を少しでも減らしたいと思った」
北海道の高校教員、小田一樹さん(仮名)は単身赴任中で、1人分会の組合員だ。出退勤記録をつける心情をこう語った。
小田さんは長時間労働の実態を数字で示すことで、職場の仲間に訴え、管理職に改善を迫ろうと、出退勤時刻の記録を約5年前から始めた。具体的には(1)学校で行った時間外勤務(2)休憩を取らずに業務を行った時間(3)持ち帰り残業――の三つに時間外勤務の内訳を整理し、PCソフトのエクセルに入力。教育委員会が配布する集計表ファイルを使う。記録を始めた年の時間外は約842時間、月平均で70時間を上回った。
「100時間超の月は9回で、最長141時間25分。過労自死した元電通社員の高橋まつりさんの記録に近い」
当時の勤務校の校長は、統廃合が進む中、学校の存続を部活動にかけていた。「部活動は全員加入制で午後7時まで。硬式野球部の顧問の時には、自家用車に生徒を乗せて片道約100キロを運転し、週末の遠征に行った。部活動の後に教材研究や業務をこなし、終わるのは10時ぐらい。午前さまの同僚もいた」と小田さんは振り返った。
・記録が職場を変える
勤務時間を記録しないのは違法だと交渉で訴え続け、職員会議や打ち合わせのたびに、長時間労働を解消するよう求めた。記録を始めてから3年後、校長は玄関口にホワイトボードを設置。各自が出退勤時に時間を書き、校長が携帯電話のカメラで撮影してデータにした。
具体的な数字がわかると、校長も縮減を進めようと述べ、毎月データを公表している。ただ、ホワイトボードの記録では持ち帰り残業や休憩取得の有無を書き込めないのが課題だ。
データが公表されると、「今月こそは早く帰ろう」と職場も変わった。しかし、やむを得ない残業を抱えている教員からは「プレッシャーを感じる。自分は仕事が遅いのではないかと思ってしまう」との意見も出た。無理に早く帰れば、その分、土日に出勤することになりかねない。小田さんは、必要な残業は行い、時間外勤務の事実を残した方がよいと助言したという。「記録を付けても状況が変わらないのではという雰囲気があった。組合の運動で一石を投じたかった」と一人でも続ける理由を語った。
・権利意識を持った運動を
どうしても減らせない時間外勤務もある。小田さんはそれを人件費に換算して、人員を要求するのが大切ではないかと考えている。
「特に若い教員は部活動の時間が長く、給与も低いため、実労働時間で給与を割ると、最低賃金以下になる。最低賃金を下回らないか確認し、割増賃金が払われないことに怒りを持つべきだ」と強調した。
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