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    2年連続でベア要求額示さず/自動車総連/企業内最賃の引き上げを重視

     トヨタや日産などの労組でつくる自動車総連は2年連続でベア要求額を示さない方針を1月9日、名古屋市内で開いた中央委員会で決めた。ベア要求額の設定は、完成車メーカー労組を頂点とする企業労連に委ね、各単組は賃金のあるべき絶対額への到達を目指す個別賃金要求への移行を加速させる。企業内最賃の水準向上を重視するなど、底上げ・格差是正の度合いを強めている。

     方針は、昨年に続き賃金の絶対額を重視する取り組みを提起した。30歳と35歳の技能職についてそれぞれ5段階の賃金指標を設け、各単組が「自分たちで自ら取り組むべき水準を設定」するよう呼びかけている。賃金水準を意識して要求・交渉することによって、企業間の格差是正を目指す考えだ。

     高倉明会長は「産別が3千円以上という要求を示すとどうしてもそこに収れんされてしまう。昨年(要求額を示さない方針に)変えたことにより単組の要求額が(3千円を超える方向に)広がった。上げ幅だけで議論すると『大手を超えられるか』という話にしかならない。昨年は賃金水準を示し『これでは低すぎて人材が定着しない』などと、労使間で実態に応じた有益な議論ができた」と話す。

     自動車総連によると、19闘争では前年比約4割増の694組合が個別賃金要求に取り組んだ。ベアなど賃金改善の回答平均額が、完成車メーカー13労組で1562円だったのに対し、販売部門576単組の平均は1609円と上回り、規模別では300人未満の739組合が1453円と健闘した。57組合が賃金制度見直しなどについて労使で継続的な協議を行うことを決めたという。

     

    ●16万4千円以上を設定

     

     方針は企業内最賃の取り組みを特に重視する。全ての組合が必ず締結すべきとし、18歳の最賃額を16万4千円以上に設定した。金属労協が昨年、中期目標に設定した月17万7千円(時給換算・約1100円)の到達へ計画的に取り組むべきとした。近年、地域別最賃の上昇で「優位性」が薄らいでいる特定最賃の存続・新設が視野にある。

     企業内最賃は集計対象1132組合のうち868組合が締結。平均額は19闘争終了時で16万779円。

     

     〈メモ〉ベア非開示広がるのか

     

     社会的に影響力のある企業の組合がベア要求額を示さず、賃上げ回答も非開示とする方式が、さらに広がるのか。春闘の今後を考える上で注目される。

     ベア要求を示さなくなった背景には、18闘争でトヨタ労使がベア回答を非開示としたことが挙げられる。相場形成役からの名実共の突然の撤退表明は労働界で大きな批判を招いた。19闘争では連合が賃金の絶対額重視を強調する方針を策定。自動車総連は当時、要求額を示さないことは「連合方針違反ではない」と説明していた。

     絶対額重視の取り組みは確かに格差是正の一つの方策である。「有益な交渉になった」(高倉明会長)というように、他労組の参考になるかもしれない。

     だがそのことと、大手労組が回答を開示して社会全体の賃上げ相場形成に協力することとは、必ずしも矛盾するものではない。19闘争ではトヨタに続き、マツダが追随し回答を非開示とした。今年さらに広がるのかに注目が集まっている。

     

    〈写真〉「自動車産業の大変革期だからこそ産別一体で生活総合改善に取り組む」と強調された(1月9日、名古屋市内)