日本で働くブータン人留学生の就労環境を改善しようと、在日ブータン人による国内初の労組が結成されてから約4カ月。「日本で就職できる」などとだまし、多額の借金を背負わせて留学生を送り出す、同国のあっせん業者(ブローカー)への対策を求めている。同労組を支援するJAMは、外国人を悪質な業者から守る試みとして、労働者供給事業を準備している。
●国王との面会が実現
ブータンはヒマラヤ山脈のふもとに位置する約80万人の小国。2011年には若い国王夫妻が来日し注目された。
近年、日本の大学で学び日本企業に就職できるなどと勧誘され、来日するブータン人留学生が増加。母国のブローカーに支払う手数料約120万円は現地では高額で、その借金返済のために日本では学業の傍ら働かなければならない。
賃金は最低賃金水準、劣悪な住まいや法外な家賃の天引き、労災逃れが後を絶たないという。法令上、留学生の就労の上限は週28時間。低い収入では借金を返せず、複数の仕事を掛け持ちせざるを得ない。過労死認定基準に及ぶ長時間労働や、不法就労をとがめられ帰国に追い込まれたケースも報告されている。
こうした状況を改善しようと、ブータン人の労働者と留学生の計8人が9月、JAMの支援を受けて国際ブータン労働組合(ILUB、愛媛県西予市)を結成した。直前には、G20労働雇用大臣会合が開催されていた愛媛県松山市で、連合の神津里季生会長も出席して結成の記者会見を行った。若者をだまし多額の借金をさせて留学生として送り出す仕組みの是正を訴えている。
ブローカーに対する組合員の恐怖心は強く、広く世界に発信することで報復を未然に防ごうと、注目の集まる国際会議に合わせて会見を開いた。
10月には天皇即位儀式への出席のために来日したワンチェク・ブータン国王との面会が実現した。国王からは、ねぎらいと共感の言葉がかけられたという。近く組合役員が帰国し、悪質ブローカー対策をブータン政府に求める予定だ。
●合言葉は「同胞を救え」
ILUBを支援するJAMは外国人労働者の処遇改善のため、労働者供給事業の準備を進めている。労組が組合員を企業に送り出す仕組み。労働者派遣事業との最も大きな違いは、派遣会社による中間搾取がないこと。その分、「派遣先」にとっては「派遣料金」が比較的安く済み、労働者の処遇も改善できる。
労組と「派遣先」は労働協約で賃金、労働条件を定める。労組が労働契約の当事者になれることが強み。外国人であることにつけこんだ詐欺的な契約や劣悪な処遇の防止を図る。
産別本部として来年3月までをめどに厚生労働相の認可を受け、まずはブータン人組合員で先鞭(せんべん)を付けたい考え。まじめな若い働き手を求め、良質な働き口を提供できる中小企業など「派遣先」の確保を図る。ゆくゆくは、外国人労働者全般に広げることを展望する。
JAMは3月、個人加入できるゼネラルユニオンを発足させた。ブータン人のほか、ベトナム人労働者などをキリスト教教会と連携しながら、口コミによる支援の輪を広げ組織化を進めている。古山修組織化推進局長は「合言葉は『同胞を救え』。外国人労働者が自分と仲間を守るために自ら立ち上がることが大切。彼らに手を差し伸べることは日本の労働組合の義務だと思う」と話している。
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