金属関連の中堅・中小労組でつくるJAMは12月1~2日、滋賀県内で春闘討論集会を開き、6千円基準のベアを掲げる春闘方針大綱を提案した。社会的公正労働条件の確立に向け、あるべき絶対額への到達を求める個別賃金要求の取り組みを重視している。製造業の景況感が厳しくなる中、「腹をくくって連帯と共闘を軸に進めていこう」(水口雅文労働政策委員長)と呼びかけた。
●8時間で食える賃金を
方針大綱は前年に続き、個別賃金要求の取り組みを重視。JAM組合員32万人分の賃金実態データから、「30歳・所定内賃金24万円」「35歳・同27万円」など当面目指すべき「一人前ミニマム基準」(全体の下位25%水準)や、「30歳・27万円」「35歳・31万円」の「到達基準」(上位25%水準)などを提示。単組は実情に応じて目標を設定し、将来を見通せる賃金制度の確立を目指す。
その上で、全体の賃上げ相場をつくるため、定昇相当分に加え、2%相当の6千円基準のベア要求を掲げる。従来の平均賃金要求基準は1万500円以上とする。
水口労働政策委員長は、下請けへの値下げ要請や短納期など不公正な取引が、長時間過重労働、離職、熟練労働者不足を招く「負の連鎖」を生じさせていると指摘。公正取引の確立、格差是正を進め「1日8時間労働で食える賃金にすることが大事だ」と語った。
一方、10月の自動車販売台数は前年同月比24%減、JAM景況調査も「今後のリセッション(景気後退)を示唆している」(安河内賢弘会長)など、「業績は反転。昨年度までの状況とは一変している」(同)という。
水口氏は「賃金は仕事と生計費で決めるしかない。企業収益に巻き込まれる要素を極力減らすべき」「(企業横断的に仕事の価値に見合う賃金を保障する)同一価値労働同一賃金の旗を高く掲げるには、JAMの組織力が必要。個別賃金を軸にあらゆる問題に対応していく」と語った。
●公正取引確立を粘り強く
政策・制度要求の重要な柱が、下請けの適正な製品単価、労務費を求める「価値を認め合う社会へ」の取り組みだ。値戻しなどの要請を発注元や親会社に行うよう、自社に求める。17闘争で始め、今年は4年目となる。
19闘争では397組合が自社に要請し、69社が取引先への価格見直し要請を実施。うち12社で実際に効果を確認できたという。今年はマニュアルを作成し、単組の取り組みを促す。
討論では「(単組役員が参加する)グループワークでは、取引関係の改善を求める声がとりわけ多く出る。『顧客の要求に泣く泣く応じている』『(コスト増分を)価格に転嫁できない』『納期遅れにはペナルティーが科されるのに、(発注元による前倒しの)納期調整には何の保障もない』などだ。この問題は産別間で温度差がある。連合や政治、他産別を巻き込んだ運動を」などの意見が出された。
〈写真〉「意識を変え、行動を変える春闘」へ、交渉参加単組の裾野拡大を目指す(12月2日)
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