公立学校の教員に1年単位の変形労働時間制を条例で導入可能にする法案について、日本労働弁護団は11月24日、都内でシンポジウムを開いた。参議院での審議を前に約130人が参加。長時間労働の是正には業務軽減や増員などが必要とし、制度の導入に反対するアピールを採択した。
常任幹事の嶋崎量弁護士は、政府が夏休み期間中の休日まとめ取りを変形労働制導入の理由にしていると指摘した。「休日のまとめ取りさえすれば、長時間労働を放置していいわけではない。実際に導入した(独立行政法人の)国立の小・中学校で時間短縮の効果があったとは聞いていない」と述べ、変形労働制は労働時間を弾力化し、規制を緩和する有害なものだと批判した。
部活動や授業準備などの時間外労働を自主的活動とみなす給特法に触れ「私立学校の教員は労働基準法が適用されている。なぜ公立の教員だけ(時間外が)労働時間ではないのか。市民が何十年も教育サービスを受け続けながら、教員の無償労働を放置し続けるのは許されない」と述べ、国民的な議論を求めた。
法案の撤回を求める署名に取り組んできた高校教員の西村祐二さんは、制度について「9、10月の疲れを(ほぼ1年後の)8月に癒やすというのか。こんな働かせ方では確実に過労死が増え、教員を目指す若者は減る。明らかに逆効果だ」と反対した。
全日本教職員組合(全教)の檀原毅也書記長は、労使協定なしに条例で導入を可能にすることに懸念を示した。「労働基準法が想定している制度とは全く異なり、最低基準を下回るものを作っていいのか。労基法の改悪だ」と訴えた。
●変形労働制狙う東京都
都庁職などでつくる東京都労働組合連合会(都労連)の和田隆宏書記長は、東京都が2年前から1年単位の変形労働時間制を職員に導入できるよう国に要望していることを紹介。都労連は導入阻止を方針化し、撤回を要求してきたという。「労働協約締結権が地方公務員に認められていないから、条例で導入するというが、交渉と合意を踏まえた当たり前の労使関係をないがしろにするものだ。地方公務員法が改正されれば、労働者全体に波及する」と強調した。
その上で「当事者である教員の取り組みが重要」と強調し、教職員組合と連携して導入阻止に取り組むと表明した。
〈写真〉1年変形制を批判する嶋崎弁護士
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