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    弁解カタログの骨格変わらず/労政審分科会/パワハラ指針案を了承

     パワーハラスメントを防止するために使用者がとるべき措置を定めた指針案が11月20日、労働政策審議会の分科会で労使の了承を得た。対象となる範囲が狭く「使用者の弁解カタログ」(日本労働弁護団)とまで酷評された素案段階の骨格は変わらず、微修正にとどまった。来年6月1日の法施行に向け、パブリックコメントなどの手続きに進む。

     指針案は、身体・精神的な攻撃や人間関係からの切り離し、過大・過少な要求、個の侵害といったパワハラ6類型ごとに、パワハラに該当する事例と該当しないと考えられる事例を併記した。素案段階では、この例示について「パワハラを助長する」と批判される記述があり、労働団体や法律家、市民団体が抜本修正を求めていた。

     この日示された指針案では、パワハラに該当しない事例にあった、「経営上の理由により、一時的に、能力に見合わない簡易な業務に就かせること」が丸ごと削除された。「経営難」を口実に草むしりをさせ退職を促すなどの行為を正当化すると批判されていた一文だ。

     誤って「物をぶつけてしまう等により怪我をさせる」との文言も削除された。相手にけがをさせるほどの行為が「故意ではなかった」との理由で容認されるとの誤解を招く、と危惧されていた。

     指針案はパワハラの相談に対応する際、相談を求める人の「心身の状況」「受けとめなどその認識にも適切に配慮する」との一文が追加された。法案成立時に全会一致で付帯決議に明記された「労働者の主観にも配慮すること」が、素案に全く反映されていなかったことへの批判に押された形だ。

     

    ●対象範囲狭いまま

     

     しかし修正は、使用者側の主張に傾く極端な内容にとどまっている。

     パワハラが成立する要件として、「(行為者に対し)抵抗又は拒絶することができない蓋然性(がいぜんせい・確実性)が高い関係」にあることが必要とした記述や、「職場」内での言動に限定した記述は素案のままだ。労働弁護団などが「範囲を狭める」と批判していた内容である。

     労働者に問題行動があった場合に「強く注意」してもいいと読める記述は「一定程度強く」と留保をつけて収め、フリーランスや就職活動中の学生への嫌がらせについても、注意を払うことだけを努力義務としている。

     さらに最終の修正では「業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、パワハラに該当しない」との一文が追加された。使用者側の主張が反映した形だ。パワハラを防止するための法令上の文書なのに、なぜこのような一文をあえて挿入する必要があるのか、疑問の声が上がっている。