全労連や純中立労組などでつくる国民春闘共闘委員会は11月21、22の両日、静岡県内で2020年国民春闘討論集会を開いた。賃上げ要求案は昨年同様、月額2万5千円以上を提案。企業内最賃協定要求案では初めて「時間額1500円以上を目指す」とした。内部留保の社会への還元を訴え、課税の検討に着手し、トヨタなど旧「八社懇」の大企業への要請を再開する考えだ。方針は年明けの代表者会議で確定する。
小田川義和代表幹事(全労連議長)は、国内外の景気減速が来春闘に影を落とす中、「大企業への富の集中を是正し、全国一律最低賃金制実現など、労働者への配分を迫る地域からの総がかりの春闘にしよう」と呼びかけた。特に来年は、残業上限規制の中小企業への適用、均等・均衡処遇を定めたパート・有期労働法の施行、パワハラ規制の施行が控えていることに触れ「攻めの春闘、労働運動が見える春闘に」と強調した。
要求案は、組合員1万5407人分を集約した要求アンケートや、13年以降の実質賃金目減り分などを踏まえ、前年同額の2万5千円以上、時間額150円以上を提案。各地で行ってきた最低生計費調査で、人間らしく暮らすには最低でも約1500円必要との結果が示されたことから、企業内最賃要求案を初めて「1500円以上を目指す」とした。具体的水準は各組織に委ねる。
方針は、大幅賃上げ、全国一律最賃制の確立や、均等処遇と底上げを迫る「非正規差別NGキャンペーン」の展開、労働時間短縮を進める36協定の締結、「安倍改憲」阻止の取り組み――を重要な運動の柱に設定した。最賃については3月から毎月、全国で統一行動を行う。
ため込み利益として批判が強い大企業の内部留保の還元を求める。内部留保課税の検討・研究に踏み出すとともに、その象徴的な存在であり、かつて賃上げ抑制路線を敷いた、トヨタや日産、日立、三菱重工など旧八社懇をはじめとする大企業への要請行動を再開する考えだ。
●賃金底上げを重視
全体討論では、金属・通信関連のJMITUが「生活悪化と景気悪化が同時に進行する春闘だ」と企業業績の状況を報告。この難局を打開するために産別全体で学習運動を開始すると述べるとともに、「ストでたたかう労働者を励まし、春闘の再構築を図ろう」と協力を呼び掛けた。
生協労連も、秋の年末一時金闘争では、経済状況悪化で経営側が厳しい姿勢を示す中、スト権を背景に交渉していると報告。「非正規差別NGキャンペーン」の一環として、正規・非正規間の働き方を明らかにしながら処遇改善を求めていることや、全国一律1500円を求める最賃署名10万筆を目指して取り組んでいると語った。
北海道労連は「職場では格差と差別が温存され、そのことが労働者の闘う力をそぎ、賃金底上げ、処遇改善を阻んでいる」と指摘。労組が職場の正規・非正規労働者の働き方と処遇の違いを明らかにしながら、使用者に格差の説明をさせ、処遇改善につなげるべき、と述べた。
福祉保育労は「最賃引き上げは正規を含む全ての福祉労働者に賃上げの影響を及ぼす」と期待を表明。医労連は誰でも時給1500円以上、月額22万5千円以上の底上げ要求を掲げていく考えを示した。
〈写真〉春闘討論集会では特に賃金の底上げを重視する発言が続いた(11月22日、静岡県内)
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