公立学校の教員に1年単位の変形労働時間制を条例で導入する給特法改正案が11月15日、衆議院文部科学委員会で可決された。本会議で採決後、参議院での議論が始まる。
萩生田光一文部科学相は、教員の長時間労働の解消は「特効薬のない総力戦」と強調。変形労働制の導入で長時間労働が解消できるのかを問われると、「働き方改革の一環であり、休日まとめ取りが目的である」と繰り返し答弁し、回答について明言を避けた。休日まとめ取りが目的の場合に限定して導入することを文科省令に記すとした上で、委員長職権による採決を行った。
勤務間インターバルの導入などを求める9項目の付帯決議が採択され、共産党を除く賛成多数で可決された。
●教員には二つの時間?
公立学校の教員に適用されている給特法は、授業準備や部活動指導を自主的活動とみなし、労働時間と認めていない。終業時間後の採点業務は自主的活動で、労働とはみなされないという。
社民党の吉川元議員がこの問題を追及すると、丸山洋司文科省初等中等局長は「(給特法に定めた職員会議などの)超勤4項目以外は、勤務時間に該当しない。2種類の時間があることになる」と答えた。
吉川議員は「給特法そのものに欠陥がある。法治国家である以上、直ちに抜本的改正に着手すべきだ」と訴えた。
●労使協定の締結認めず
立憲民主党の川内博史議員は超勤4項目以外の自主的活動に残業代を払うとすれば、試算で7千600億円が必要と指摘。財務省に対し「文科省から給与増額などの協議(申し入れ)があった場合、真摯(しんし)に対応するのか」と迫った。財務省の阪田渉主計局次長は「協議があれば真摯に受け止めたい」と答えた。
変形労働制導入に労使協定を不要とすることにも批判が相次いだ。川内議員は、地方公務員法55条1項では職員団体との交渉が定められており、書面で協定を結ぶべきだと指摘し、労働者保護の観点からも指針に書き込むよう求めた。
萩生田文科相は「勤務条件条例主義に則り、労使協定ではなく、条例により導入する必要があると考える」と答弁。交渉については「校長が教師と対話し、個別の事情をくみ取ることが求められる」と述べ、通知などで示すとした。
共産党の畑野君枝議員は、変形労働制を導入すると、行事が多く過労死も発生している6、7、10月の所定労働時間が延びることに危機感を示した。「1日8時間労働は教員も同じ。導入は、超過勤務を見かけ上縮減し、実際は固定化する。休日まとめ取りが魅力で教員になるのではない。労働時間の短縮を真面目に考えているとは思えない。過労死に拍車を掛けるものだ」と憤った。
各議員から迫られた給特法の廃止・抜本的見直しについて萩生田文科相は、変形労働制導入の翌年に勤務実態調査を実施し、それを踏まえて給与体系などの制度を見直すと繰り返し強調。給特法もその選択肢の一つになる含みを持たせた。
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