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    格差是正へ分配構造転換を/連合春闘討論集会/均等・均衡、最賃で議論

     連合は11月6日、2020春季生活闘争討論集会を開き、「分配構造の転換」「賃金水準闘争の強化」を掲げる春闘基本構想について話し合った。企業内最低賃金協定1100円以上を目指す取り組みや、均等・均衡処遇などについても意見が出された。

     基本構想は要求の組み立てについて、働く者の将来不安を払拭(ふっしょく)し、経済の自律的成長、社会の持続性を実現するためには「人への投資が不可欠だ」とし、「分配構造の転換につながり得る賃上げが必要」と指摘。社会全体に賃上げを促す観点と、企業規模や雇用形態間の格差是正を進める観点から、底上げ、格差是正、底支えの概念を整理している。

     「底上げ」要求は、定昇相当分の2%と賃上げ分2%の計4%とし、「格差是正」は「30歳・25万6千円」や時給1700円(勤続17年相当)などの水準目標、昇給ルールの確立などを設定する。「底支え」は、企業内最賃協定を全ての労働者を対象に結ぶとし、水準は時給1100円以上を目指す。

     産業、地方での賃上げ相場の形成と、あるべき賃金水準への到達闘争の両輪で、全体の底上げを図りたい考えだ。そのための取引の適正化も重視する。

     そのほか、「働き方改革の定着」をはじめ、非正規雇用で働く人の雇用の安定と公正な労働条件の確保、高齢者や障害者の課題、ハラスメント対策などを掲げている。

     神津里季生会長はあいさつで、賃上げが社会に広がっていないことに懸念を示し、その最大の鍵が「不合理な取引慣行にある」と指摘。下請け企業の賃上げ原資を大手・親企業が奪っていないか、厳しい点検を呼びかけた。4%の上げ幅要求を維持することについて「デフレ脱却の道半ばでの戦線離脱は、社会的責任の放棄を意味する。経済の腰折れを招き、これまでの政労使の努力が水泡に帰す。底上げの流れを止めてはならない」。

     

    ●均等・均衡で要望

     

     格差是正のための「分配構造の転換」をめぐっては、近年関連企業労組の賃上げに注力しているJR連合が「大きなパラダイムシフト。社会にどれだけこのフレーズを届けられるかが重要だ」と表明。中堅・中小の金属労組でつくるJAMは、下請け発注単価に労務費増加分の転嫁をしっかり行わせる姿勢を方針に明記するよう求めた。

     一方、自治労・全国一般は「連合としての統一闘争が不可欠。具体的な額を明示した統一要求を掲げるべき。大手の結果が波及力として大きな力になる」と注文した。

     UAゼンセンは「(パート労働者への)一時金支給は水準面で労使の思惑の乖離(かいり)が大きく、厳しい交渉になる。連合の姿勢を示してほしい」と要望した。ゼンセンはパート労働者の一時金について、最低2カ月分の確保を前提に要求することを検討中だ。

     時給1100円以上の企業内最賃協定について、最賃低額県ではハードルが高いという意見も。本部担当者は「連合内で協定締結組合は約5割。まずは全ての労働者を対象に結ぶこと。連合のリビングウェイジから始め、1100円以上を目指すというステップもあり得る」と説明した。

     全国ユニオンは、職場のハラスメント対策方針の具体化を求めた。本部担当者は「労働協約にしっかり禁止規定を盛り込み、禁止は当然ということを訴えていきたい」と法改正を見据えた取り組みを呼びかけた。

     

    〈写真〉均等・均衡を義務付ける法律の来春施行に向け、連合の討論集会では集団的労使関係の重要性が強調された(11月6日、都内)