全労連や純中立の労組でつくる国民春闘共闘委員会は10月24日、都内で年次総会を開き、2020年春闘方針の第1次案を提起した。大幅賃上げや非正規労働者の均等待遇などの実現へ、大企業の内部留保を社会に還元させるための取り組みを一層強化する構えだ。
第1次案は、全国一律最賃制度の確立や非正規労働者の均等待遇、労働時間の短縮、改憲反対の運動も重視。大幅賃上げ、ハラスメント(嫌がらせ)の根絶、無期転換など「人生設計可能な働き方実現のための抜本的構造転換を求めていく」とした。スト権を背景に、職場・地域への結集を強め、民間・公務の労組による一体的な闘いの構築を目指す。
その実現のために、449兆円にも上る史上空前の大企業の内部留保を、中小企業や労働者のために使うなど、社会への還元を求める運動を強めるとともに、内部留保への課税も検討する。消費税の減税を求める運動の強化や、介護・年金などの社会保障改悪を許さず、医療制度の改善を求める取り組みも進める。
小田川義和代表幹事(全労連議長)はあいさつで、「大企業の労働分配率はついに50%を割った。日本銀行や年金積立金で支えられた株価で、ぬれ手で粟(あわ)のボロもうけをしながら、富裕層は少ししか税金を納めず、大企業は中小企業よりも実効税率が低い。人件費の削減と、不公正な税制が富の偏在をもたらし、労働者の貧困を招いている。この転換へ力を合わせることが最も大事なことだ」と20春闘の構えを強調した。
春闘方針は、11月21、22日の討論集会を経て、年明けに確定する。
〈討論〉非正規の処遇改善へ
討論では自交総連が、白タク行為を事業として合法化する「ライドシェア」の導入阻止の取り組みについて発言した。交通過疎地について限定的に認められている、自家用車による有償旅客運送の適用対象を広げる法改正が来年計画されていることを紹介。「ライドシェア導入の突破口」だとし、改悪阻止と、安全な交通を守る取り組みを強める決意を語った。
日本医労連は、夜勤手当や残業代がなければ暮らせない賃金の改善へ、賃金要求の議論を深めていくと発言。民放労連は、手当や福利厚生で均等・均衡を求めるパート・有期労働法の来春施行に向け、法対応への取り組みを強めるとともに、一部に動きがある不利益変更を許さない取り組みを展開すると語った。
官公労からは全教が、条例による変形労働時間制(1年単位)を公立学校教員に導入する「給特法改正案」について、長時間労働を改善する内容ではないなどとして、法案成立阻止の取り組みを強めると表明。「(法案が通れば)労使協定なしに変形労働時間制度を導入できるようになる。労働者全体に関わる重大な問題だ」と、悪影響の大きさを指摘した。
自治労連は、約4割に増えた非正規職員の処遇改善の取り組みを報告した。来春施行される会計年度任用職員制度の規制をすり抜けるために、フルタイムからパートへの不利益変更や、大幅な賃下げを可能にする民間委託が狙われていると指摘。自治体で働く労働者についてはどんな働き方でも時給1300円が必要と訴える最賃要求の取り組みを報告した。
〈写真〉国民春闘共闘委員会の総会では2020春闘について「内部留保を活かすべき」との世論の醸成を図ることが提起された(10月24日、都内)
コメントをお書きください