厚生労働省がパワハラ防止に関する指針素案を示したことを受けて、日本労働弁護団は10月21日、パワハラを助長するなどとして素案の抜本的修正を求める緊急声明を発表した。有効な防止策になり得ないどころか、「パワハラの範囲を矮小(わいしょう)化し、労働者の救済を阻害する」と厳しく批判している。
声明は、パワハラと認められるには行為者に対し、受け手が抵抗、拒絶できない「優越的な関係」にあることが要件とされている点を問題視。「大きな力関係の差を必要とする定義で、上司と部下の関係でもパワハラから除外される危険性がある」「これまでの解釈以上にパワハラの範囲および使用者の責任を極めて限られたものに限定するもの」として、削除を求めている。
指針素案が、労働者の側に問題行動があった場合、その内容や程度に応じて判断するとしている点にも言及している。裁判例では、勤務態度、ミス、出社前の飲酒など問題行為のある労働者に対する、度を超えた「指導」はパワハラと認められてきたと指摘。その上で「あたかも労働者の行動に問題性が高ければ、指導・叱責(しっせき)がパワハラに該当しなくなるかのような表現は、誤りであり、削除すべき」としている。
素案がパワハラに「該当しないと考えられる例」を示していることも厳しく批判している。「『使用者の弁解カタログ』ともいうべき不適当な例示」であり、「抽象的で、幅のある解釈が可能なため、加害者・使用者による責任逃れの弁解に悪用される危険性が高い」などと指摘。この例示は「不要」とした。
全会一致で確認された国会の付帯決議の内容がきちんと反映されていない点も指摘している。
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