5月に成立したパワーハラスメント防止関連法に基づく指針素案が10月21日、厚生労働省の労働政策審議会雇用環境・均等分科会に提示された。パワハラに該当する例と該当しない例を示すとともに、事業主が講じなければならない責務を示している。審議では、原案通りの策定を求める使用者側と、素案が対象を狭めているなどとして改善を求める労働側とで、主張が対立している。
指針素案はまず、パワハラの内容について(1)優越的な関係を背景とした言動(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの(3)労働者の就業環境が害されるもの――の3要件を全て満たすことが必要とした。
素案は、精神的な攻撃や人間関係の切り離しなどパワハラ6類型ごとに、該当する例と該当しない例を提示した(表)。「該当しない例」の表記は、セクシャルハラスメントに関する指針にはなく、例示を疑問視する声も聞かれる。
その上で、事業主が講じなければならない措置として、管理者や労働者への周知、相談体制の整備、事実確認や懲戒処分、再発防止などの迅速で適切な対応、プライバシー保護、不利益取り扱いの禁止――などを盛り込んだ。
他社の労働者や、フリーランスなど個人事業主、インターンシップなどの学生に対する言動にも注意を払うよう努めることとした。他社の労働者や、顧客からの著しい迷惑行為への対応にも言及。相談窓口の設置や適切な対応を行うことが望ましいとしている。
審議では、使用者側が、混乱が生じかねないなどとして慎重対応を求め、原案を妥当とする意見を表明。労働側は「対象範囲を狭める表現が多い」「パワハラかどうかの判断の際に『労働者の主観』への配慮を盛り込んだ付帯決議を反映させるべき」などとして改善を求めた。指針策定は年内に決着させる予定だ。
〈写真〉パワハラ指針を審議する労政審では、原案への賛否が労使で分かれた(10月21日、都内)
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