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    変形労働制の導入撤回を/教員、過労死遺族らが集会

     公立学校の教員に1年単位の変形労働時間制を導入する法改正案の撤回を求める集会が10月8日、国会内で開かれた。現職の高校教員の西村祐二さんと教員の夫を過労で亡くした工藤祥子さんが立ち上げた「給特法のこれからを考える有志の会」が主催。同会は撤回を求めるネット署名を9月16日から開始し、10月4日までに、3万筆以上が集まった。教員や保護者からは、拙速な導入に懸念の声が上がっている。

     工藤祥子さんは12年前、中学校教員の夫の義男さんを40歳の若さで亡くした。「夏休みになったら、病院に行くと言っていたのに、6月に亡くなった。統計上、過労死は5、6月の発生が多い。制度が導入されたら過労死が増えるのではと心配に思い、署名を始めた」と胸中を語った。

     「斉藤ひでみ」という仮名を使い、長時間労働や部活動問題をツイッターや集会で訴えてきた西村祐二さんは、今回の法改正案をきっかけに実名公表と顔出しを決意した。変形労働時間制の導入について「目的は何かと問いたい。夏休み期間に休日をまとめ取りさせる目的なら、既に(一部で)実施されている学校閉庁日を2週間設ければ十分だ」と述べた。

     その上で、「現在の業務量に合わせて勤務時間を延ばすのではなく、業務量を削減して8時間労働で帰れる職場を目指してほしい」と訴え、授業準備などの残業を自主的活動とみなす給特法の抜本的な改正を求めた。

     名古屋大学大学院の内田良准教授は、導入の検討に必要な各月の労働時間の統計が文科省にはないと指摘。自治体や学校が自主的に集計したデータを調べたところ、残業は毎月発生し、制度導入の前提となる閑散期がない状態だという。

     「(導入に対する)教員の反発はとても強い。教育行政への不信感が直感的な反発になっているのではないか」と強調した。仮に導入するとしても、学力テストや免許更新制の廃止など、国の政策で増えた業務の大幅な削減、年休の取得や超勤手当の支給など、なんらかの保障を教員に約束することが不可欠だと私案を示した。

     

    〈写真〉荻生田文部科学大臣に面会して署名を手渡したいと語る西村さん(左)と工藤さん(10月8日、国会内)