東京電力グループの会社ワットラインサービスで電気メーターの取り替え工事などに従事していた高野清さん(58)が、雇い止めの撤回を求めて10月7日、東京地方裁判所に提訴した。高野さんと労働組合(全労連・全国一般東京地方本部)は、契約上は個人請負になっているが、解雇や雇い止めを規制している労働契約法上の労働者だと主張しているのが特徴だ。
ワットラインサービスは、東電の送電事業を担う東電パワーグリットが出資する東光高岳の100%子会社である。高野さんは1995年から取り替え工事などに従事してきたが、今年3月に契約を打ち切られた。会社側は高野さんについて、スマートメーターを交換する工事のミスなどの反則点が規定の点数を超えたため、打ち切ったと説明している。
●後出し処分は不当
訴状によれば、裁判では(1)高野さんが労働契約法上の労働者に当たるか(2)その場合、雇い止めに合理性があるかどうか――が争点。労働者性の判断に当たっては、企業組織への組み入れの有無や、仕事を受けるかどうかなどの諾否の自由の有無、時間や場所の拘束の度合いといった基準が適用される。
この点で原告側は、高野さんが事業所の指揮監督下で働いていたと主張。一定の稼働日数や工事数のノルマが課せられ、服務規程まで定められていたことなどを挙げ「(認定が厳しい)労働基準法の労働者に限りなく近い働き方になっていた」という。
契約打ち切りについては、同社が新たな反則規定を定めたのは昨年6月であり、それを1月にさかのぼって適用し、処分するのはおかしいと批判している。
こうしたことから、原告側は高野さんが労働契約法上の労働者であり、契約打ち切りは合理性のない、不当な雇い止めになり違法と主張している。
裁判とは別に、高野さんが加入する全労連・全国一般東京地本と同一般合同労組は、ワットラインサービスがこの問題で団体交渉を拒否していることについて、東京都労働委員会に申し立てをしており、年内にも決定が出される予定だという。
〈解説〉問われる判断基準
今回の裁判では労働者性の有無が大きな争点だ。
労働法では、(1)労働基準法上の労働者(2)労働組合法上の労働者――という二つの概念がある。一般に労基法上の労働者の方が基準が厳しく、認められにくいとされる。高野さんのケースは、労働契約法上の労働者に当たるかどうかを争うもので、裁判例は多くない。
原告側代理人の鷲見賢一郎弁護士によれば、労働契約法上の労働者を判断する場合、労基法上の労働者の判断基準を適用すべきとする学説が多いという。しかし、法違反に対して刑事罰を科す労基法の場合は厳密な判断基準が求められるとしても、民事法である労契法に労基法並みの厳密さを求める必要性は薄いとする学説も存在すると指摘。
原告側は「労基法上の労働者の基準に限りなく近い状態であれば、労契法による保護規定を適用すべきだろう」と訴えている。
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