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    米政府が残業代ルールを改悪/労組が批判/「労働者は年14億円を失う」

     米トランプ政権がこのほど、時間外労働に関わる新ルールを通知した。米国労働総同盟・産別会議(AFL・CIO)は「新ルールにより、労働者は初年度だけで14億ドル(約1500億円)を失うことになる」と批判している。

     一定の年収や職種によって使用者に残業代支払いを免除する「ホワイトカラーエグゼンプション」などについて、オバマ政権時代に修正が加えられて残業代支払いの対象労働者を拡大していた。今回の新ルールはそれを大幅に後退させる内容だという。

     

    ●年収要件を引き下げ

     

     具体的には、(1)労働者の範囲について使用者の恣意(しい)的な判断を許さないとした規制を緩める(2)年収要件を51万ドルから約36万ドルへ大幅に引き下げる(3)年収基準に付けられた物価スライド要件を削除する――の3点によって、これまで残業代を支払われていた数百万人の労働者が不支給になる事態が広がると分析している。

     AFL・CIOは、米国では10年前から好景気が続いているものの、労働者への配分は不十分なままだと指摘。労働者への配分を増やす政策の一環として、オバマ政権が残業代ルールを見直したと強調し、トランプ政権による新ルールによって労働者への配分がより少なくなると批判した。

     初年度は14億ドルの損失になるが、物価スライドが削除されたため、今後は賃金が上がると年収要件を上回る労働者が増えて残業代が支払われなくなる。14億ドル以上の損失が発生すると警告している。