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    不当労働行為と認めず/名古屋地裁の判決/鯱第一交通の解雇事件

     労働組合の委員長と書記長の解雇が不当労働行為に当たるかどうかが争われた裁判で、名古屋地方裁判所は9月27日、原告側の請求を棄却する判決を言い渡した。「(会社が)労働組合に対して良い感情を抱いていなかったことが(解雇などの)動機の一つになっているものともうかがえる」としつつも、不当労働行為とは認めなかった。

     委員長と書記長は名古屋市で営業する鯱第一交通の従業員。13年に労働組合を結成し、活動していたが、2人は病気休職の期間が終わったなどとして2016年に解雇された。同社は業界最大手の第一交通の百パーセント子会社である。 原告側は、組合員が同社の意を受けたと思われる従業員から脱退工作を受けて脱退が続いたこと、組合員の再雇用が拒否されたこと、委員長ら2人の組合役員に対する嫌がらせや暴言が繰り返されたことなどを主張した。実際に脱退工作を受けた従業員の証言や、組合脱退を勧めるビラ、2人に対する暴言の録音テープなども証拠として提出していたが、判決は不当労働行為を認定しなかった。

     

    ●愛労委決定を追認

     

     この事件では、愛知県労働委員会が昨年10月、不当労働行為の救済申し立てを全て棄却する決定を行っている(現在、中央労働委員会で審理中)。不当労働行為かどうかを判断するに当たり20の争点について検討し、全て否定した。

     この決定について労組と弁護団は「組合が申し立てた不当労働行為の各事実を外形的事実としては認めながら、組合側の主張と会社側の主張を並列し、不当労働行為の疎明がないものとして退けたのが特徴だ」と指摘していた。会社側が不当労働行為を否定しているから認めないということであれば「愛労委の決定は救済機関としての役割を放棄したものとして厳しく批判されなければならない」と批判した。

     

    ●中労委に影響するか

     

     今回の地裁判決は、基本的にこの愛労委決定の線に沿った内容だ。

     とはいえ、判決は同社について「組合や組合員に良い感情を抱いていなかったことが…うかがえる」と述べた点は、愛労委決定より踏み込んでいるのも事実。事案は中労委で審理中であり、こうした判断がどう影響するか注目される。