国際市民社会は核兵器の根絶を、各国政府や国際機関に長く働きかけている。しかしその実現を大きく阻むのが、核兵器製造企業の存在と、それら企業に投融資を行うグローバル大企業(銀行)や投資機関の存在である。核兵器製造企業に資金が流れ続ける限り、製造企業の活動は縮小することはないだろう。
●7500億ドルを投資
「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」の国際運営団体であるオランダのNGO「PAX」は、「核兵器にお金を貸すな」プロジェクトとして、核兵器産業に投資する各国の金融機関を調査し、その動向をまとめている。6月に出された2019年版報告書によれば、17年1月からの2年間で、世界325の金融機関が7480憶ドル(約80兆8千億円)以上を18社に投資していることが判明した。
代表的な核兵器製造企業は、米国のエイコム、ボーイング、ベクテル、ロッキード・マーティン、英国のBAEシステムズ、フランスのタレス、オランダのエアバスなど。
これら18社への投資額の半分以上を、バンガードやブラックロック、バンク・オブ・アメリカ、JPモルガン・チェース、シティグループなど10の金融機関が占める。
いずれもグローバルな大銀行・金融機関であり、米国企業が多い。
●りそなHDは決別
この問題は、日本の私たちとも無関係ではない。調査によれば日本の大手金融機関8社(日本政策投資銀行、芙蓉総合リース、三菱UFJフィナンシャル、みずほフィナンシャル、野村、オリックスコーポレーション、SMBCグループ、三井住友トラスト)も核兵器製造企業に投資をしている。投資総額は256億ドル。なかでも三菱UFJフィナンシャルは総額の約4割を占め、核兵器産業への「貢献度」が突出している。
一方、核兵器産業から完全に決別した企業もある。りそなホールディングス(HD)だ。同社は18年11月、「社会的責任投融資に向けた取り組み」と題する文書を公表。「核兵器・化学兵器・生物兵器等の大量破壊兵器や対人地雷・クラスター弾等の非人道的な兵器の開発・製造・所持に関与する先や、国内外の規制・制裁対象となる先、またはそのおそれのある先への融資は行いません」と明記した。
これまで核兵器製造を使途とする融資を禁止する例はあった。それ以外の目的であっても該当企業には一切融資しないと宣言したもので、こうした取り組みは国内の大手銀行では初めてだ。
●取り引き銀行代える?
17年7月に核兵器禁止条約が国連で採択され、欧州を中心に核兵器産業への投融資を禁止する銀行や機関、投資家も広がっている。そうした国際的な潮流を捉えて方針を転換したりそなと、核兵器産業に投資し続ける三菱UFJなどの違いは明確だ。
私たちの預貯金が、巡り巡って核兵器産業に投資され、兵器が製造されている。こうした事実を知らない人もまだ多いのではないか。まずは三菱UFJ、みずほ、三井住友の大手3銀行に預貯金や取引のある方は、意思表示をした上で銀行を代えてみてはどうだろうか。(アジア太平洋資料センター共同代表 内田聖子)
参考サイト
https://peaceboat.org/29877.html
コメントをお書きください