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    インタビュー/〈教員の働き方〉上/1年変形制では改革にならず/連合総研 藤川伸治主任研究員

     教員の長時間労働が社会問題になって久しい。志望者が減って採用試験の倍率は低下するなど、教育そのものが危機的な状況にある。文部科学省は「働き方改革」を推進。1年単位の変形労働時間制の導入を可能とする法改正も控える。こうした施策は、長時間労働の抜本的な解決方法になるのだろうか。教員の労働実態を調査・研究している連合総研主任研究員の藤川伸治さんに話を聞いた。

     

     ――文部科学省は、中央教育審議会の答申(今年1月)を受けて「学校における働き方改革」を進めています。勤務時間の上限に関するガイドラインも設けられました。

     藤川 民間同様、時間外勤務は月45時間に上限が設定されたものの、罰則はありません。(超勤4項目といわれる特定業務以外の残業は自発的活動とみなす)給特法はそのままですから、残業代は発生せず、国も自治体も財政的に困ることもない。自発的活動といわれるただ働きの時間に上限を設けただけです。

     ――1年単位の変形労働時間制の導入も示されました。

     行政職の地方公務員は地方公務員法上、労使協定を締結できず、1年単位の変形労働時間制を導入できません。主要な労働法の解説書や厚生労働省の導入手引きは、労使協定の締結が不可欠と説明しています。変形労働時間制は労働者の生活や健康に大きな負荷がかかるからこそ、労使協定の締結が重んじられるのです。しかし、中教審の特別部会ではこの問題に触れられませんでした。

     変形労働時間制は、残業代を発生させないために導入するもので、残業の命令を出さないのが原則です。学校の場合は保護者対応などの突発的な業務もあり、変形労働時間制では対応できません。

     ――今秋の臨時国会では、導入に向けた関連法改正案が提出されるといわれています。教員が労使協定を結べるようになるのでしょうか。

     それはないでしょう。「導入する場合には条例で定める」「条例で定めた場合は実施できる」などの文言を関連法に記す方法が想定されます。

     まずは国会で1年単位の変形労働時間制の原則を確認すべきです。行政職の地方公務員には導入できないのに、なぜ教員には可能なのか、その根拠はどこにあるのかを説明させる必要があります。

     その上で実施に当たっては、職場の意見聴取を行い、過半数代表が詳細な書面を校長と交わし、人事委員会や公平委員会、または首長に提出するという方法が考えられます。その場合、違法な実態を取り締まる第三者機関のチェック機能を担保させることが求められるでしょう。

     過半数代表を選ぶことになれば、労働組合の役割と責任は必然的に大きくなります。職場を組織化し、労働者側の要求にかなった内容の協定に引き寄せることができるかどうか。そうした仕組みを法律に定められるかが鍵です。労働組合のチェック機能が問われます。(逆に言えば)組合の存在意義を示す機会にもなります。

     ――この改革で長時間労働は解消されるのでしょうか?

     長時間労働の解消には(1)定数改善(2)業務削減(3)給特法改廃――のベストミックスが必要だと考えます。例えば、給特法を改廃し、実労働時間に見合った残業代が生じるとします。その支払いに必要な予算を定数改善に回して教員を増やせば、1人当たりの労働時間の短縮が可能です。それでも予算や人手が足りない場合は、業務そのものを減らす。このように三つを組み合わせれば、長時間労働を抑制するインセンティブ(誘因)が生じます。今回の答申は、定数改善や業務削減を進めるインセンティブが弱い。これが答申の最大の問題点です。

     業務削減について、登下校の見守りや掃除など、必ずしも教員の業務ではないものを仕分けし、削減の可能性を示しました。しかし、教員以外の誰がその業務を担うかといった議論はありませんでした。人員と予算の保障もない。本当に改革を行うなら、地方自治体をはじめ、市民や保護者、教育委員会など、幅広く多様な意見を聞いてしっかり議論すべきだったのではないでしょうか。結論を急ぎ過ぎた印象は拭えません。

     中教審の特別部会は、教職員組合や教員当事者を委員に入れず、意見を聴取しませんでした。こうした審議プロセスにも強い違和感を覚えます。