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    技能実習で被ばく労働/ベトナム人元実習生らが提訴

     元外国人技能実習生のベトナム人男性3人が、実習計画にはない除染作業などに従事させられた上、被ばくしたのは安全配慮義務違反だとして、元実習先の会社に合計1230万円の損害賠償などを求める訴訟を9月2日、福島地裁郡山支部に起こした。

     実習生らは2015年7月、鉄筋施工と型枠施工の技能習得を目的に来日。16年3月から約2年間、福島県郡山市と本宮市での除染作業や、一般立ち入りが禁止されていた浪江町で下水道配管工事に従事させられたという。日給は日本人の半額程度で、除染作業に必要な特別教育は事実上行われず、被ばく線量の測定結果も知らされなかった。

     元実習生らは全統一労働組合に相談。被ばく労働に対する補償と謝罪を求めて団体交渉を行ったが実習先が拒否し続けたため、裁判に踏み切ったという。

     自由人権協会の旗手明理事は「ベトナムは16年に原発計画を撤回した国。除染の技術は全く必要ない。技能実習制度は日本側が都合よく外国人労働者を使う制度になっており、制度を廃止すべきだ」と訴えた。

     東京労働安全衛生センターの飯田勝泰事務局長は「急性被ばくに伴う健康被害だけでなく今後、悪性の疾患発症もあり得る。実習生らが健康不安を抱くのは当然だ」として被ばく線量を通知しない実習先会社を批判。入管法改正で新設された「特定技能」で除染作業に従事できること自体を問題視した。

     

    〈写真〉除染作業の特別教育で使用するテキストを掲げる、東京労働安全衛生センターの飯田事務局長。230ページあり、全て日本語だ(9月4日、都内)