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    〈雇用類似の現場で〉(2)/屋外撮影現場にトイレなし/安全衛生は二の次?/ジャーナリスト 北健一

     雇用類似の現場には安全衛生面の課題もある。

     日本俳優連合(日俳連)の森崎めぐみさんは「屋外の撮影現場にもロケバスにも、トイレはほぼありません。俳優たちは変装して公共施設のトイレに行ったりしています」と明かす。

     日俳連、プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)フリーランス連絡会の3団体が実施したフリーランス・芸能関係者のハラスメント実態アンケートには、森崎さんの発案で、「トイレのない場所での撮影時に、野外での排せつを余儀なくされた」という項目が入り、17人が選択した(8月8日時点での中間報告。俳優回答者は172人)。

     森崎さんは6月のMICフリーランス連絡会の会合でも、トイレのケースを紹介した。すると話題提供者の田久悟・全建総連労働対策部長が「ゼネコンなどの建設現場はだいぶ良くなってきましたよ。女性の職人が増えていることもあり、温水洗浄便座が入ってる現場もあります」と話した。

     課題はまだ多いものの、建設産業では深刻な人手不足や、入職者不足を何とかしようと、労務単価改善や週休2日制導入など、労使の努力で働き方改革が進む。

     

    ●人手不足の回路働かず

     

     人手不足が就労条件の改善を促す。その回路は、俳優業では働かないのか?

     8月19日に開かれたフリーランス・芸能関係者へのハラスメント実態アンケートをめぐる記者会見でフリーランス協会の平田麻莉代表理事は「テレビ局など発注者が限られ、〃なりたい人〃が多いのが一因。就労条件についてのルールがないのも問題です」と説明した。森崎さんも「アンケートには『夢があるから』という回答がありました。そのために我慢するんだと」。働き手のやりがいに企業側が付け込む「やりがい搾取」の一例にも見える。

     アンケートの中間とりまとめでは、「仕切りがないところで着替えをさせられた」も52人。テレビや映画といった、華やかな舞台の裏側は厳しい。

     労働安全衛生法は雇用労働者にしか適用されないが、トイレをはじめ安全・衛生対策は、どんな働き方であっても不可欠だろう。厚生労働省が設置した「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」(鎌田耕一座長)では、この秋から、就業条件についても議論を進める方針だ。