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    処遇改善の「約束」守らせよう/自治労連の非正規公共評/ヤマ場の会計年度職員問題

     来年4月にスタートする会計年度任用職員制度に関する労使の協議が各自治体でヤマ場を迎えている。その多くが9月議会での条例改正を予定しているが、自治労連は「非正規職員の処遇改善と雇用安定という法改正の趣旨に逆行する動きが目立つ」として、安心して働ける制度づくりに向けて労使交渉の強化を呼びかけている。

     自治労連大会(8月25~27日、都内)の前日に開かれた非正規雇用・公務公共関連評議会(非正規公共評)の大会では、同制度をめぐる交渉・協議の状況を交流し、雇用と労働条件を守り前進させるための方策について話し合った。

     

    ●9月議会で条例改正へ

     

     会計年度任用職員は改正地方公務員法などに基づく新たな一般職非常勤制度で、現在の臨時・非常勤職員の大半が移行する。フルタイムとパートタイムの2種類があり、フルタイムはもちろん、パートにも一時金(期末手当)を「支給できる」としたのが特徴。雇用(任用)期間は原則1年だが、再度任用(事実上の契約更新)は可能とした。国会審議で総務省は、非正規の処遇改善などが法改正の趣旨であると言明し、移行に当たり労働条件の不利益変更や雇い止めを戒めた。

     非正規公共評によると、政令市などでは制度の大枠が基本合意され、今後は詳細について定めることになる。多くの自治体では9月議会での条例制定が予定されており、中には12月議会にずれ込むところもある。

     自治体側が提案している内容の特徴は(1)一時金を支給する代わりに月例給を引き下げて年収を維持(2)現在フルタイムの労働者を含めて短時間パートへ一律に移行(3)更新(再度任用)回数に上限設定(4)移行時に年休の繰り越しなどを拒否(5)非正規職員の職を廃止して民間に委託――などが挙げられている。

     

    ●基本給大幅アップも

     

     名古屋市職労は休暇制度・賃金水準を引き下げる当初提案を押し返し、年収ベースで現行水準の維持・改善を勝ち取ったという。大和郡山市職労(奈良県)は一律パート化の提案を撤回させ、現在フルタイムの職員については「フルタイム会計年度任用職員」とする内容の再提案を引き出している。

     島田市(静岡県)は、制度移行を回避する目的で非正規の職を包括的に民間委託する案を提起したが、市労連などが反対運動を強めるなか、関連予算案の否決を勝ち取った。

     川越市(埼玉県)の「臨時保育士の会」は、ほぼ全員が組合に加入する中でフルタイム会計年度職員への移行や、経験加算給の上限(頭打ち)撤廃、基本給の大幅アップなどの前進を図ったと報告した。

     東京公務公共一般は、労働基本権が保障されていた特別非常勤職員でなくなることから「当局による団体交渉拒否も予想される。それに対抗するため、職員団体登録を進めている」と報告した。

     

    ●合意と納得の制度を

     

     非正規公共評は、9月議会などの条例制定に向け「合意と納得に基づく徹底した協議・交渉を貫くこと」を提起し、賃金をはじめとする労働条件の詳細については厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」なども活用して均等待遇を求めようと訴えた。全国の経験を交流するため、10月6日に同評議会拡大幹事会を開催することも決めた。