アジア太平洋戦争での日本の加害責任を軽視したり否定したりする「歴史修正主義」の言説が世の中で勢いを増している。文芸評論家の斎藤美奈子さんは「これ以上、修正主義の毒を広げないため、SNSなどで反転攻勢を仕掛けよう」と呼び掛けている。
市民団体の市民文化フォーラムが都内で開いた「8・15集会――戦後日本の現在」で語った。
斎藤さんは、従軍慰安婦問題への謝罪と反省を記した河野談話(1993年)や村山談話(95年)を機に強まった右派の攻勢を振り返り「政界、メディア、教育、インターネットの世界では歴史修正主義の言説が勝利した」と指摘。その要因として(1)退屈な平和教育に対する反発の盛り上がり(2)仮想敵を設定した分かりやすい理屈(3)刺激的な表現(4)草の根の地道な活動――を挙げた。
この流れに対抗する側の言論状況については「紋切り型の右傾化批判や、理屈っぽくて難解な反論が多く、しかも相手をなめていた。そのつけが今来ている」と述べ、今こそ的確な批判が必要と訴えた。
分かりやすい出版物や動画に加え、SNS活用を強調し「(歴史をゆがめるなど)ひどい内容のニュースには、圧力に屈せず大げさなくらいに反応しよう」と呼び掛けた。
教育についても言及。憲法9条の大切さはある程度定着しているとした上で「今必要なのは憲法に基づく主権者・人権教育だ。若者の自己肯定感の薄さと権利意識の薄さは関係している。人権を身に付ける教育を」と力説した。
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