参院選沖縄選挙区は、1人区での野党共闘10勝の一角を担った。憲法学者で無所属新人の高良鉄美氏が29万8831票を獲得し、自民党公認の新人、安里繁信氏との事実上の一騎打ちを制した。沖縄の選挙としては大勝と評価していい6万3903票差。しかし、投票率は49・0%と全国平均並みで、参院選沖縄選挙区では2007年の補欠選挙に次ぐ低さだった。
全国的に盛り上がりに欠け、政権の圧力に屈しているとしか思えないテレビ報道の弱さも影響しただろう。沖縄では昨年9月に県知事選、今年2月に県民投票があり、選挙疲れもあった。候補者の擁立過程に対する反発やしらけの存在も否めない。
しかし、一番大きいのは、何度民意が示されても政権が無視して辺野古新基地の工事を強行し続けていることだ。諦めや無力感が、特に若い世代を中心に広がっている。政権の姿勢が、民主主義の根幹である選挙を破壊しつつあると言ってもいいくらいだ。そんな中でも、辺野古新基地ノーの民意が底堅いことが示されたことの意義は大きい。
●県連の説明は二転三転
選挙後、自民党沖縄県連がおかしなことをやってひんしゅくを買った。
投開票日から3日後の7月24日、記者会見を開いた。テーマは「参議院選挙の沖縄タイムス社記事について」。23日付記事で、安里氏に対して県連幹部が「公認を取り消してもいいんじゃないか」と発言したという部分について、県連が沖縄タイムスに抗議し、発言した幹部の氏名を明らかにせよと迫った。その上で、翌日に記者会見を設定したのである。
当然、地元紙は報道への圧力として反発し、25日付で、名指しされた沖縄タイムスは与那嶺一枝編集局長名で、記事に誤りはないとし、発言者名を明らかにするよう求めたことに対しては「公党による報道機関への不当な介入と言わざるを得ない」と批判した。琉球新報も識者コメントを交えて批判した。
ところが、県連が抗議した相手は地元2紙だったと朝日新聞が報じ、沖縄タイムスも26日付社説で、琉球新報も抗議されたと書いたためややこしくなる。琉球新報は県連幹部の発言を報じたが、抗議を受けておらず、編集局長コメントも出していない。
結局8月1日に県連が再度会見を開き、説明が二転三転したことを認め、琉球新報にも抗議することで認識を統一したと説明するに至った。2日付琉球新報の記事は「一転、本紙にも抗議へ」「県連、態度二転三転」という見出しになり、3日付で松元剛編集局長のコメントを掲載し、「突然説明を変更したことには理解に苦しむ」としつつ、報道への圧力を批判した。
●政権の傲慢さの表れ
敗戦の責任を問われる立場にある県連が、事後に内部の発言が報道されたことで地元紙に八つ当たりし、「組織の統一見解でない発言を匿名で書くな」と圧力をかけたというのが事の本質である。
政治家や政党は、メディアや有権者との緊張関係の中で活動している。それが、このような行動を安易に行い、二転三転して恥じない。安倍一強政権の傲慢(ごうまん)ぶり、劣化ぶりが指摘されて久しいが、地方組織でも露わになった事例といえよう。メディアも有権者も、さらに毅然(きぜん)としなければならない。(ジャーナリスト 米倉外昭)
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