2019年度の最賃額を審議する埼玉地方最低賃金審議会の専門部会が7月31日に開かれ、個人や県内団体による意見陳述が初めて行われた。時間は1時間で、委員から多数の質問が出された。全労連の斎藤寛生常任幹事(賃金・公契約運動局長)は「新たに意見陳述が実施されたのは久しぶり。1時間の意見陳述枠は全国を見ても珍しい。約半数の地賃審で意見陳述が行われているが、実態は聞置くだけ。実際に質疑応答が行われることはあまりない」という。
この日の意見陳述は一般に公開された。意見書を提出した4団体のうち、埼玉医労連を除く3団体(埼労連、生協労連コープネットグループ労働組合、全労連・全国一般労働組合埼玉地方本部)が意見を述べた。質疑応答の時間も含めて1団体20分の持ち時間だ。
●東京との格差是正を
意見陳述では、大幅引き上げに加え、地域間格差を縮める必要性が訴えられた。
埼労連の加藤靖幹事は「各地域の商工会議所と意見交換しているが、共通して出されるのは中小企業の人手不足だ」と述べ、最賃が高い東京に労働力が流れていると指摘。「スピード感をもって最賃を引き上げる時であり、目安通りだと東京との格差は縮まらず、人手不足は解消しない」と訴えた。
コープネット労組の櫻井美子常任中央委員は非正規で働く仲間の生活実態を紹介した。フルタイムで働いても一家を養うには足らず、東京のコンビニでダブルワークをしている人がいると述べ、「最賃が1500円になればダブルワークをしなくても済む」と話した。
全国一般埼玉地本の林博義委員長は、自治体が民間委託するビルメンテナンスなどの賃金が最賃に張りついている実態を明らかにした。
●委員から質問相次ぐ
専門部会の委員からは「最賃引き上げは、どのくらい従業員に影響を与えるのか?具体的に教えてほしい」「民間委託の価格に問題があることを自覚した」「意見書だけではなく、生の声を聞きたいと思っていた。これからも前向きに考えていきたい」など、多くの質問や感想が出され、活発な質疑応答となった。
労働者委員や部会長は発言の中で「東京との格差」に言及した。埼労連の加藤幹事は「東京との格差を縮めるために目安金額にどれだけプラスするか、注目している」と話す。
●長年の取り組みが実る
画期的な意見陳述の時間を確保できたのは埼労連の取り組みの成果だ。
埼労連は長年、公労使の委員や所属団体、審議会会長と懇談を重ねてきた。そこでは民間の求人時給調査の結果を示しながら「専門部会で発言する機会を作ってほしい」と要請してきたという。
●千葉でも初の意見陳述
埼玉に続き、千葉でも8月1日、初めて意見陳述が行われた。
千葉労連の矢澤純事務局長は「意見陳述の時間は10分程度だった。最賃1500円を求める署名を毎年数千筆提出し、意見陳述実施を求めてきた。実現してうれしい」と語っている。
〈写真〉開会前の埼玉最低賃金審議会。この後、手前の席に「陳述人」が座って意見を述べた(7月31日、さいたま市)
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