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    「8%で息の根止められた」/トヨタ下請けの元社長/消費税10%の中止訴え

     安倍政権が10月に実施する消費増税。その影響は中小企業で働く者にも及んでくる。名古屋市でトヨタの2次下請け企業を経営していた加藤成男さん(仮名、63)が会社破産を決断したのは、2年前。従業員を全員解雇せざるを得なかったという。その決め手になったのが、5%から8%に増税されて膨らみ続ける消費税の滞納額だった。「増税を止めなければ、私のような悪夢が繰り返される。10%は行うべきではない」と訴えている。

     

    ●自己資産も取り崩し

     

     加藤さんの会社は自動車の空調部品を製造していた。従業員は40人。

     2008年のリーマンショックと、11年の東日本大震災によって売上はじりじりと下がっていた。その上、トヨタからは1・5~2・0%のコストダウン要請が年に2回来る。

     「(余分な在庫を持たない)カンバン方式なので、下請け企業が一つでもストップすると全体の流れに影響する。契約を切られないためには、経営悪化の状態を知られないようにして、周りには『大丈夫、大丈夫』と言い続けていた」

     どうしても黒字決算にする必要があり、自身の生命保険や貯金を取り崩す対応を繰り返した。

     

    ●従業員全員を解雇

     

     そんな状態に追い討ちをかけたのが、2014年の消費税増税だ。5%時代には、なんとか払えていたものの、法人税額を上回る消費税額の支払いは容易ではなく、8%になってからは納税が滞った。結局、17年時点で滞納額は約400万円に膨れ上がり、税務署からは支払い計画と併せ、延滞金(税)まで請求される事態に陥った。

     このままでは、会社継続は難しいと判断した。父親から引き継いだ経営を断念するのは苦渋の決断だったという。そのことを従業員に伝えたのは、2017年の7月31日。当日の解雇通告だった。

     「泣き出す従業員もいてつらかった。ただ、不幸中の幸いだったのは、同業者が工場を買ってくれたことだ。従業員は全員、違う経営者の下でこれまで通りの仕事を続けられることになった。うちでしかできない仕事もあるので、この点はよかった」と語る。

     

    ●不況は深刻化する

     

     今、加藤さんは2年前を振り返りつつ、こう語る。

     「当時の苦しみは今も夢に出てくる。体力がある会社ならともかく、体力のない会社だときつい。赤字でも消費税がのしかかってくるためで、中小・零細企業経営者の皆さんのことが心配だ。増税の影響でものは売れなくなり、不況も一層深刻化する。10%への引き上げはやるべきではない」