全労連の地方組織の一つ、埼労連が毎年行っている民間募集時給調査で、全国チェーンを展開する企業の方が地場中小企業よりも低い時給額で募集していることが分かった。大手全国チェーンが地域間格差と低い最低賃金を利用していることが浮き彫りとなった。
調査は最賃との関連を調べるもので約10年前から行い、昨年は最賃額確定後(秋)にも調査している。今年の調査件数は5262件。4月12日から10日間、駅などに置かれる求人誌や新聞に折り込まれる求人広告などを対象にした。
●深刻な人手不足
今年の特徴は、時給千円での募集件数が最も多かったことだ。埼玉県の最賃は898円。埼労連の加藤靖幹事は「深刻な人手不足の影響が顕著に表れた結果。地域の商工会議所と意見交換すると『(時給を高くしないと応募者を最賃985円の)東京にとられてしまう』との声が共通して出る。埼玉・草加地域と東京・足立地域は地続きであまり離れていないのに、コンビニの時給は100円近く差がある。逆に、埼玉・本庄地域などは群馬県(最賃809円)の伊勢崎市から高校生がバイトに来ていると聞く」という。
中小企業は赤字倒産ではなく、人手不足による廃業が多く、地域が疲弊していると語る。
●最賃にはり付く大手
最賃での募集は87件あり、卸売・小売業ではコンビニ各社やサミット、いなげやなどの大手スーパー、飲食業でもガストやジョナサンなど大手レストランチェーンが占める。
大手の募集が多い3業種(卸売・小売、宿泊・飲食、生活関連サービス)でチェーン店と中小企業を比較すると、3業種全てで地場中小企業の平均時給額が高い(前ページグラフ)。
最賃額を少し上回るだけの低い時給で募集する大手チェーン店。商品の価格は全国同じで、統一の作業マニュアルもあり、最賃に合わせて、時給を抑制する理由は見い出しにくい。
埼労連では「最賃を引き上げるための中小企業支援策と併せて、大企業に地域での相場を引き上げる役割を果たしてもらう必要がある」と訴えている。
加藤幹事は「チェーン店が低い時給で募集できるのは、大手は募集人数が多いため、応募する人は時給が低くても採用される確率が高い方を選ぶのでは」との見方を示している。
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