「老後生活には年金とは別に2千万円必要」という金融庁の金融審議会報告を機に、参院選では年金問題に注目が集まった。安倍首相は「政府方針とは違う」などとはぐらかし、選挙戦を通じてごまかし続けた。今、年金で生活している高齢者はこの問題をどう見ているのか、日本退職者連合の人見一夫会長に話を聞いた。(文責・編集部)
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金融審議会の報告書の内容はその通りだと思いますよ。私は東京で公務員をしてきて、今の年金額は月20万円に届きません。報告書は老後生活に月25万円が必要と言いますから、5万円以上の不足です。
年金額は働いてきた経過や掛け金の額で異なりますが、これから退職する人はもっと厳しくなるし、もともと国民年金の人たちはとても暮らせる金額ではありません。
金融審報告書は実態を反映しています。それを政府が受け取るとか、受け取らないという話ではないでしょう。年収200万円を切っている非正規労働者にとって、2千万円も貯蓄するのは無理。そんな余力はなく、自己責任でなんとかすべきという考え方は間違っていると思います。
公務員や大企業の労働者の年金はまだましと言われますが、引かれるものが多いのも事実。昔と違って介護保険料などが天引きされ、目減りする一方です。住宅の有無にもよるので一概には言えないとしても、厳しい生活実態にあるのは間違いありません。
●正規雇用増やしたい
政府は65歳までの雇用を70歳にまで延ばす意向でしょう。私は、一般論として働き続けるのは悪いこととは思いませんが、それが本人の選択ではなく、生活のために働かざるを得ない実情にあることが問題です。
一定期間働いて保険料を払えば、年金だけで暮らせる社会が理想です。
退職者連合としては、年金財源を確保するためにも正規雇用を増やして、賃金を上げていくことが不可欠だと考えています。連合と連帯して現役労働者の雇用を守り、賃上げの運動を支援していきます。
財源との関係で言えば、消費税の税率をどうするかですが、微妙な問題です。欧州のように20%台の税率でも社会保障などの実感が得られる社会というのも一つのモデルでしょう。しかし、日本の国民はこれまで増税に見合うだけの実感を持てないできました。
参院選では立憲民主党も国民民主党も10%への引き上げには反対しました。反対を言うのは簡単ですが、消費税を含めて考えないと(財源問題は)難しいと思います。増税を前提に税と社会保障の一体改革を確認した民主党政権時代の3党合意もあります。
●税の使われ方が問題
要は、税の使われ方に問題があるということ。税率を上げても国民が納得できるような施策を行えるかどうかです。国民が「取られっ放しだ」と感じている状況では、なかなか難しいでしょう。
安倍政権は国民が望んでいない改憲に熱心です。大事なのは暮らしをどう改善するかであり、いろんな世論調査を見ても、政治への要望で多いのは社会保障の拡充と景気対策です。政府は政策の方向が間違っています。
安倍政権が続く限り、この方向は変わらないでしょう。私たちは「行動する退職者連合」として、この状況を変えるため、さらに声を上げていきます。
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