井関農機の子会社で働く有期契約労働者5人が、正社員との不合理な格差是正を求めている労働契約法20条裁判で、高松高等裁判所は7月8日、精勤手当など合計約300万円の支払いを命じた。いずれも一審判決を支持する内容で、賞与については格差を不合理とは認めなかった。
原告は井関松山製造所の3人と井関松山ファクトリーの2人。支給を認めた手当は、住宅手当、精勤手当、家族手当(以上製造所)、物価手当(以上ファクトリー)。最高裁の判例を踏襲し、各手当の主旨を個別に考慮するとした上で、手当は職務内容と関係なく、年齢や出勤日数などの支給要件が規定されていることから、不支給は不合理であり、違法とした。
賞与については、長期雇用の正社員の場合、賞与を手厚くして有為な人材の獲得・定着を図るという人事施策には相応の合理性があると認めた。その上で、有期契約労働者に正社員の4分の1程度の寸志が支払われている実態を評価。職務内容の範囲などに相応の差異があり、正社員個人の成績や貢献度だけでなく、労務対価の後払いの性格も含んでいると指摘した。
厚生労働省が昨年末に示した「同一労働同一賃金ガイドライン」を引用し、賞与の格差は容認できる「問題とならない例」に該当すると付け加えた。
●無期後も支払い義務
現在5人は無期契約に転換し、有期契約時と同一の労働条件を定めた無期転換契約就業規則が適用されている。会社側は、無期転換後の就業規則でも賞与と手当が不支給になっており、無期転換以降の支払い義務を負わないと主張。判決は、労契法7条(就業規則による労働条件の合理性と周知)に基づき、原告らが加入するえひめユニオン井関分会と就業規則に関する交渉を行った十分な証拠がないことなどを挙げ、会社側の主張を退けた。
事情異なり納得できず/三輪晃義弁護士
原告側の三浦晃義弁護士は同一労働同一賃金ガイドライン(指針)の引用について「判決理由が指針に触れざるを得なかったという意味では、指針は判決に影響を与えていると思う。しかし、本件は事情が全く異なるのに、指針の『問題とならない例』を参考にして賞与の請求を排斥した点は納得できない」と述べた。
労契法20条をめぐる裁判の判決文で、格差を不合理ではないと判断する際に多用されている「有為な人材の獲得・定着を図る」という文言について懸念を示した。この文言を挟めば、具体的な事例を指針が不合理な格差とする「問題となる例」に当てはめることが難しくなり、指針の引用は妥当ではないとした。
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