2019年度の地域別最低賃金の改定審議が7月4日、中央最低賃金審議会で始まります。低すぎる金額水準、過大な地域間格差、中小企業への支援など、課題が山積。これらに言及した「骨太方針」を踏まえ、どのような検討が行われるかが、注目されます。
●憲法がないがしろに
課題の一つは低すぎる水準です。全国加重平均の時給874円は、年2千時間働いても174万円に過ぎません。しかもこの額を超えているのは大都市圏の1都2府4県だけ。最低額は鹿児島の761円です。最低賃金法は、憲法25条(生存権)が定める「健康で文化的な最低限の生活」を具体化した法律の一つですが、その理念を満たしているとはとても言えないでしょう。
欧州先進国は1100円~1300円台の水準で、米国では15ドル(1665円)を目指す州や都市が相次いでいます。韓国の835円(8350ウォン)は、日本の34県の水準を追い越しています。
低過ぎる上、さらに深刻なのが地域間格差の拡大です。最大224円の差は44万円もの年収格差を生じさせます。最賃は地方の賃金相場に影響するため、特に大都市への若者の流出が深刻で、人手不足に拍車をかけています。新幹線で2時間もしない地域で時給が200円も低くなるのですから(表)。
中小企業への支援も焦眉の課題です。近年、大手による単価削減圧力の強まりが、最賃上昇分を販売・納入価格に転嫁できない中小企業の経営を揺るがし始めています。
今年の「骨太方針」は、こうした課題に少なからず目配りせざるを得なくなっています。「労務費上昇の取引対価への転嫁の円滑化」が初めて盛り込まれ、地域間格差についても「配慮」の文言が入りました。現行最賃を「先進国の中で低い水準にとどまる」と認めています。
中央最低賃金審議会ではこの方針に「配意」し、どのような審議が行われるかが注目されます。
●政治課題に浮上
折しも、参院選挙では、過去に「最賃撤廃」を掲げた「維新の会」を除き、与野党が競うように目標を掲げています。自民党と公明党が全国平均1000円以上、立憲民主が5年以内に1300円、国民民主は誰でも1000円以上、共産・社民が全国一律1500円です。
自民党内では2月、全国一律をめざす議員連盟が発足。立憲民主党もワーキングチームを立ち上げ、最賃をボトムアップ政策の根幹に位置付けました。
一方、日本商工会議所など中小企業団体は反発を強めています。実効ある支援策を本気で検討することが求められます。
さらに、最賃の改定審議が中央、地方ともにほとんど非公開とされている問題の是正も求められます。労働法制に関する審議が広く公開されているのとは対照的です。
民主主義の原則や最賃制度への理解と納得を得る上でも、問題があると言わざるを得ません。今年の中央最賃審がどのような対応を取るのか、多くの人々が注視しています。
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