民法改正で債権の請求権の消滅時効が見直されたことに合わせ、賃金請求権の消滅時効見直しの検討が労働政策審議会で始まった。7月1日、労働条件分科会が開かれ、民法と同じく消滅時効を5年にすべきと主張する労働側と、慎重対応を求める使用者側とで意見が分かれた。
改正民法は請求権の消滅時効を(1)権利行使できることを知った時から5年間行使しない場合(2)権利行使できる時から10年間――に改めた。「使用人の給料の債権は1年間行使しない時は消滅」とした、民法の例外規定は廃止された。残業代など賃金債権の現行の時効は2年。
厚生労働省内の有識者検討会がこのほど報告書をまとめ「将来にわたり消滅時効期間を2年のまま維持する合理性は乏しく、労働者の権利を拡充する方向で一定の見直しが必要」と示唆した。同分科会ではこれを基に議論していく。
労働側委員は「賃金支払いを求める裁判は準備に数カ月かかり、現行の2年では短過ぎるとの声がある。労働者保護を考えれば民法を下回ることはあってはならない。民法と同様に5年にすべき」と主張した。
一方、使用者側委員らは賃金台帳や記録の保存期間が延びれば、コスト増となり企業経営に影響が及ぶと述べた。企業再編が広がる中、同じ部署に長期間勤務する人がいなくなることによる不都合が生じる可能性も指摘し、慎重な対応を求めた。
〈写真〉賃金債権の時効を2年と定めたのは戦後直後の1947年。使用者はその見直しに難色を示している(7月1日、都内)
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